長期データで確認する家計の異変

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1. 家計収入が減っている!

前回は、1人あたりGDPと平均給与について、名目値、実質値の変化に着目しました。

名目値では日本は両指標とも停滞しています。一方、実質値では1人あたりGDPは成長していますが、平均給与は停滞が続いています。

たくさん生産しているけれど、労働者への分配が増えていないという事が言えそうです。

今回は、家計の長期時系列データを眺めてみましょう。

2000年以降の変化については、以前記事化しました。

参考記事: 収入増えても支出減らす家計
参考記事: 持家増で節約志向を強める家計

2000年の水準から見ると、共働きが増えたこともあり、直近ではやや家計収入が増えている面もあるようです。

長期データで眺めてみるとどうでしょうか?

図1 日本 家計 月額 実収入・実支出・可処分所得 2人以上の勤労者世帯
家計調査 収支編 より

図1は日本の家計のうち、2人以上の勤労者世帯について、実収入、実支出、可処分所得などの長期時系列データです。

家計の実収入(青)も、可処分所得(緑)も、実支出(赤)も1990年代までは順調に増加していますが、バブル崩壊以降成長が鈍化し、1997年をピークにして減少傾向となっています。

実収入は近年やや増加傾向ではあるようですが、2017年の時点では1997年の水準には全く届いていないですね。

ちなみに、2021年では60.5万円と、ほぼ1997年の水準を回復しています。

よく見ると、世帯主収入や消費支出、黒字も1997年あたりをピークにして減少傾向です。

特に消費支出は減少傾向が継続しているように見えますね。

このグラフは、平均給与や法人企業の付加価値、人件費、1人あたりGDPの傾向ともよく似ていますね。

参考記事: 豊かになれない日本の労働者 (平均給与の推移)
参考記事: 日本企業の転換点と変質の正体 (法人企業全体の付加価値、人件費の推移)
参考記事: あまりに長い日本の経済停滞 (1人あたりGDPの推移)

2. 家計の20年の変化とは?

具体的な数値の変化として、ピーク時と2017年の直近のデータを比較してみましょう。

図2 日本 家計 月額 1997年→2017年 変化
家計調査 収支編より

図2が1997年と2017年の数値を比較したグラフです。

いずれの数値もすべて減少しているのが特徴ですね。

日本 家計 月額
1997年→2017年 単位:万円
59.5 → 53.4 (-6.1) 実収入
48.7 → 42.0 (-6.7) 世帯主収入
45.6 → 41.2 (-4.4) 実支出
35.8 → 31.3 (-4.5) 消費支出
49.7 → 43.5 (-6.2) 可処分所得

既に見てきたとおり、男性労働者はどの世代でも平均給与が減少しています。家計の収入としても、男性労働者の収入減少が大きく影響している事がわかりますね。そして、収入と連動して支出も減っています。

よく見ると、実収入の減少以上に可処分所得が減っています。そして、実支出の減少以上に消費支出が減っています。

これは、実収入が減っているのに非消費支出が横ばいなため、税金などの非消費支出の割合が高まっていることを示すと思います。

現に、図1を見てわかる通り、収入が大きく減っているにもかかわらず、非消費支出は横ばい傾向が続いています。

実支出に含まれないローン返済の影響もありそうです。近年では、持家率が高まっている事もあり、ローン返済額は軒並み増加しています。

可処分所得の低下と相まって、その分を消費支出を切り詰める事でやりくりしているのかもしれませんね。

3. 家計収入の変化

日本の家計の第一の特徴は、収入が減少している事ですね。

家計収入の詳細推移を見てみましょう。

図3 日本 家計 月額 実収入 詳細積上 推移
家計調査 収支編 より

図3は家計の実収支について、詳細の積み上げグラフです。

世帯主収入(青)、配偶者収入(赤)、他の世帯員収入(緑)、事業・内職収入(黄)、財産収入(茶)、社会保障給付(紫)、特別収入(灰色)です。

やはり世帯主収入が、実収入の大部分を占めますが、1997年のピークから大きく減少しています。

一方で、配偶者収入や社会保障給付はやや増加しているようです。

日本 家計 実収入 月額
1997年→ 2017年 単位:万円
59.5 → 53.4 (-6.1) 実収入
48.7 → 42.0 (-6.7) 世帯主収入
5.6 → 6.4 (+0.8) 配偶者収入
0.4 → 0.3 (-0.1) 事業・内職収入
0.1 → 0.1 (-0.0) 財産収入
1.8 → 2.8 (+1.0) 社会保障給付
1.3 → 0.8 (-0.5) 特別収入

世帯主収入は月平均で7万円近く減少しています。共働きが増え配偶者収入は増えてはいますが、増加量は月平均1万円もいかない水準ですね。世帯主収入の減少を補いきれていません。

社会保障給付が月平均1万円増えているのも特徴的です。子供手当などもここに含まれるかもしれません。

いずれにしろ、労働者の給与水準が下がる事で、家計としての収入も減少しているという事がわかりました。

現役世代にお金が回らず、ひと昔前よりも減少してしまっているのが良くわかります。労働者は消費者でもありますので、収入が減れば当然支出も減りますね。

皆さんはどのように考えますか?


編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2022年8月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。