エステで契約トラブルになった時の戦い方:クーリングオフ以外にも方法はある(及川 修平)

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脱毛エステのトラブルが急増している。

「脱毛エステのトラブル急増 4~6月の相談3倍、男性も被害 国民生活センター」2022/07/31 時事通信

記事では「男性は全身脱毛を求める場合が多いといい、平均契約購入金額を見ると、10~20代男性の平均は女性よりも約18万円高い約52万円となった」と、男性が契約トラブルに巻き込まれているケースが紹介されている。

男性のエステサービスは近年大きく成長して利用者も増えているが、その分トラブルも増加している。2022年4月以降は成人年齢が引き下げられ、18歳で親権者の同意なく契約ができることもあり、今後契約に不慣れな若年層にトラブルが広がるだろう。

契約のトラブルに対応する手段としてクーリングオフという制度がある。有名な制度だが正確に把握している人は少ないだろう。加えて、クーリングオフ以外にも対応方法はある。

消費者トラブルを専門とする司法書士の立場から解説してみたい。

クーリングオフを正しく知る

強引な勧誘にあってしまい、やむなく契約をしてしまった場合、まずはクーリングオフを検討すべきだ。クーリングオフは理由なく契約を解除できる制度で消費者保護の強力なツールとなっている。 ただし、なんでもかんでも契約解除が可能なわけではなく、一定期間サービスを提供する契約で対象となるものはエステや美容医療のほか、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスだ。

クーリングオフが利用可能な場合、契約書類を受け取ってから8日間は理由なく解除可能で、契約を解除すると記した書類を期間内に発送すればよい。8日間は来週の今日まで、と覚えれば分かりやすい。

契約書類を受け取った日が月曜日ならば翌週の月曜日までに書類を発送すればよい。

クーリングオフを規定している特定商取引法では、クーリングオフの方法は書面で行うこととされている。電話でクーリングオフをした場合の有効性には争いがあるが、裁判例を見るとおおむね認められているケースが多い。ただ「言った言わない」という無駄な争いを生まないためにも書面でかつ記録が残るように内容証明郵便で行うべきだ。

事業者によってはクーリングオフをさせまいとして、「キャンペーン期間中の契約は解約できない」と嘘の説明をする悪質なケースもあるが、このような場面を想定した法律の規制があるので安心してほしい。

クーリングオフを邪魔する行為があった場合、これによりクーリングオフができないと誤解してしまったときは、事業者はクーリングオフができることを記載した書類を契約者に改めて交付し、更に「クーリングオフができますよ」と口頭でも説明する義務を負うことになる。

事業者が対応を行わない間は、最初の契約書の交付から8日間が経過してもクーリングオフの利用が可能となる。事業者が自ら進んでクーリングオフを妨害したことを認めて対応を取るとは考えにくく、つまり妨害行為を行ったまま事業者が上記の対応を取らない限り、消費者側はずっとクーリングオフができることになる。

クーリングオフは8日を過ぎたらもう使えない、というほど単純ではなく、制度を正しく知っていれば消費者を守る盾になってくれる。

クーリングオフが難しくてもあきらめない

クーリングオフが難しい場面でもあきらめるのはまだ早い。特定商取引法は「中途解約権」を認めている。読んで字のごとく契約が必要でなくなった場合は、いつでも途中で止めることができるのだ。

エステの契約であれば中途解約権を制限する契約は法律で無効となる。

中途解約権を使った場合の契約の清算方法についても法律では定められている。事業者が取れる違約金が法定されており、サービスを受ける前であれば2万円、サービスがスタートした後であれば、実際に利用したサービスの額に加え、2万円または契約残金の10パーセントに相当する額のいずれか低い方までという上限が設定されている。 事業者がこれを超える違約金を取る場合は違法となり、費用を先払いしている場合は上限を超えた分は返金してもらえる。

契約を途中で辞めたいと考えたとき、高額な解約金を請求された場合、違法な可能性もある。負担すべき額は正確に確認をしてほしい。

結論

契約を解除する際にクーリングオフという方法があると知っていても実際にどう使えばいいかわからない人は多いだろう。事業者が契約の解除に素直に応じてくれないこともある。

クーリングオフと中途解約権について紹介したが、トラブル解決がうまく進まない場合は、一人で交渉に臨まず、各地域の消費生活センターや司法書士、弁護士などに相談するのも一つの手段だ。

及川 修平(司法書士)
福岡市内に事務所を構える司法書士。住宅に関するトラブル相談を中心にこれまで専門家の支援を受けにくかった少額の事件に取り組む。そのほか地域で暮らす高齢者の支援も積極的に行っている。

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2022年8月9日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。