この本で紹介するのは仕事で成績1位を取るノウハウではありません。職場で人気者になる方法でもありません。当たり前に仕事をして毎日を平穏に過ごせる。「自分はここにいていいんだ」と安心できる。こんな「普通」ができるようになる方法を紹介する本です。
「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」
F太著、小鳥遊著
サンクチュアリ出版
人はなぜ先送りしてしまうのか
なかなか取りかかれないことがあります。一度取りかかってしまえばすっきりするとわかっていてもできません。このような仕事の先送りは、なぜなくならないのでしょうか。これは人間なら誰しも持っている「身体がやり方を覚えていること」から先にやりたくなるという性質が原因だと著者は言います。
私がいちばん苦手で、先送りをしがちなのが『領収書の整理』というタスクでした。 財布の中に溜まった領収書を整理して、会計帳簿に記入する。 やるべきことはたったこれだけなのに、いつも先送りしてしまい、期日ギリギリになってひとく後悔していました。一方で、自分の行動を分単位で24時間、記録しています。(F太さん)
そのデータを元に、毎日1時間くらいかけてレポートを作成しています。こんな面倒な作業を何年も続けているのです。取りかかってしまえば数分で終わる作業 (領収書の整理)をずっと先送りし、かたや1時間以上かかる作業 (レポートの作成)を毎日こなせるのは、慣れた仕事をこなすほうが、よっぽどラクで簡単だからです。(同)
慣れていないことに手をつけるとき、が頭で考えている以上に、身体は拒否反応を起こしています。そうやって「慣れていない作業」に拒否反応を示しているうちに「慣れた仕事」がどんどん降ってきて、ますます慣れていない作業は先送りされていきます。
仕事をしっかりと身体に覚えさせることができれば、先送りはどんどん減っていくはずだと思いませんか?そこで私は『今日こそ、この領収書の山を処理しきろう!』と考えるのをあきらめ、『毎日5分だけ、整理しよう』と決めて、溜まった領収書を少しずつ整理しました。すると取りかかることがどんどんラクになっていったのです。(F太さん)
行動力はなぜ阻害されるのか
先延ばしを好ましいと思っている人はいないでしょう。「やろう」と思っていたのに行動が抑制されてしまうことがあります。先延ばしを改善することはなぜ難しいのでしょうか。これは感情によって行動力が奪われているからです。
私たちから行動力を奪っていくものを考えてみましょう。筆者は大きく3つに大別できると考えています。①いますべきことに追われている、②やることを把握できていない、③気乗りしないです。
すこし見ていきましょう。
① いますべきことに追われている
いま追われているものがあると、「そろそろ手をつけないといけないのに」と思いながらも手を付けられなくなります。「やらないといけない」のですが行動に移せない状況です。
② やることを把握できていない
これはやるべきことを忘れてしまうことです。やるべきことを把握しておかないと「やるのを忘れた」ということになりかねません。
③ 気乗りしない
思考がついてこないと行動には移せないものです。感情が「NO!」と言っているのです。「やりたくない」という気持ちが強ければ行動は抑制されます。
本書の著者は、F太さん、小鳥遊(たかなし)さんです。二人は「自分の弱みはそのままに、仕事の苦手意識はなくすことができる」「必要なのは「やり方」であって「根性」や「心構え」ではない」と、本書では多くの試行錯誤と数えきれない失敗を経てお二人が構築されてきた「仕事のやり方」を惜しみなく紹介しています。
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