インドを同盟国にしたことは安倍さんの世界史的功績だ

21世紀初頭の世界で、安倍晋三元首相は、最高の政治家だったと世界史に記憶されると思う。その絆を完成させるためにも、安倍さんの存在は不可欠であった。それだけに、理不尽な憎しみをかき立て、反アベ無罪の空気をつくりあげて、テロ事件を引き起こした「偽リベラル」(国際常識でのリベラルとはかけ離れた人々)は、世界史に対する犯罪を犯したといえると思う。

統一教会と少しばかりの接触をもったことで、殺されて当然の犯罪者のように偽リベラルの人たちは仕立て上げようとしているが、いったい、安倍さんが彼らにどんな便宜を与えたというのか誰も指摘していない。

以下は、安倍さんとインドについて、「安倍さんはなぜリベラルに憎まれたのか – 地球儀を俯瞰した世界最高の政治家」で書いたことから再編成して紹介する。

安倍外交は、「価値観外交」「地球を俯瞰する外交」といわれましたが、中国の台頭という世界文明の秩序を崩しかねない危機のなかで、民主主義・人権・市場経済という価値を共有する国々が、地球儀を俯瞰する視点から、手を携えることを提唱し作り上げたのです。

そこでのポイントは、従来のアジア太平洋の協力に加え、インド、そして英仏独などヨーロッパ諸国を引き込んだことです。インドを参加させたことは、それが、中国や経済力でこれから均衡できただひとつの国だからです。

暗殺事件のあと、米アメリカン・エンタープライズ研究所のザック・クーパー研究員は、「衝撃的なニュースだ。彼をこんなに早く失ったことを受け入れるのは難しい」と語りました。「安倍さんは、そびえたつ存在だった。彼は、多くの米国人の、日本だけでなく、インド太平洋全体への見方を再定義した」と指摘。「安倍政権下では、しばしば日本が米国を主導することになった。(米国が日本を主導してきた)何十年にもわたる慣行を逆転させた」と述べたが、これを報じたのが、朝日新聞だったので、「生きてるうちにそういう記事少しでも書け」とさんざん罵詈雑言がSNSで飛び交いました。

米上院は7月20日、安倍氏を「世界の自由と繁栄、安全を促進するとともに、権威主義や専制に対抗する今後数十年の日米協力の礎を築いた偉大な友人」「一流の政治家であり、民主的価値のたゆまぬ擁護者」とたたえる追悼決議案を全会一致で採択しました。

また、トランプ大統領との付き合い方に苦慮したヨーロッパはもちろん、習近平やプーチンなど各国首脳も、安倍さんから知恵を借りる場面が多かったのも特筆ものでした。

2019年 G20サミットでトランプ大統領、モディ首相、安倍晋三元首相(肩書きは当時)
首相官邸HPより

安倍さんの業績のなかで世界を変えたかもしれないのは、インドを西側陣営に組み込んだことかもしれません。中国の台頭の結果、アメリカの力が圧倒的であるという前提をたてられなくなっているなかで、日米豪印戦略対話(クワッド)という枠組みを成立させ、さらに英仏独などが力を合わせれる枠組みもつくりあげたのです。

「自由で開かれたインド太平洋」、安倍元首相の一言が変えた米国のアジア観と中国観」という記事が、あのリベラルなCNNの電子版にのっていました(2022年7月22日)。

そこには、「暗殺者の銃弾で殺害された安倍氏は生前、西側の同時代人の誰よりも多くのことに取り組み、その課題に対応してきた」「同氏が作り出したシンプルなフレーズ、『自由で開かれたインド太平洋』は、多くの外国の政治指導者たちを変えた」「もっとも重要な点だが、結果的にある一国が表舞台に登場することになった」「インドの重要性を認識し、民主主義の立場から将来の中国覇権に対して均衡を保つ役割を担うと考え、組織的にインドの指導者らへの呼びかけを開始し、構想の中へと引き入れた」と言った言葉が散りばめられていたのです。

私は1990年代の前半に、通商産業省でインド担当課長も務めていたころ、同じ発想でインドとの関係を飛躍的に発展させたいと思い、無理矢理に用事を創ってインドにいったりもしました。

しかし、このころは、インドとの直行便はなくなり、通商産業省は事務官キャリアの商務官の派遣をやめ、ニューデリーには日本料理屋がひとつもありませんでした。

いくらこの国の重要性を訴えても、国民の関心は低かったのですが、安倍さんは一気に日本外交の主要な同盟国として位置づけ、選挙区を訪ねてモディ首相をもり立て、訪問時も大歓迎されました。訪日時には、京都の東寺でインド伝来の曼荼羅の世界を首相が見学する様子がインドのテレビでは流されてましたが、ヒンズー教徒にとってインパクトがあったと思います。