8月2日に米国のナンシー・ペロシ下院議長が台湾を訪問し、蔡英文総統と会談した。これについて若干の分析を以下に試みたい。
- ペロシ訪台は、米国が台湾の民主主義を支持する表明にはなった。
- だが、中国のリアクションを招き、海・空域及びミサイル発射等の軍事演習は海上封鎖のシミュレーションとなると共に、その実行意思の顕在化を招いた。
- 訪台後の8月10日、ペロシは中国を「強力な民主主義」「世界で最も自由な社会のひとつ」と動画の一部で発言した。文脈からすると台湾を中国と言い間違えたのではとも思われるが、現時点では訂正しておらず、バランスを取るためか何らかの脅迫をされたのかは判らぬが、意図的だった可能性は残る。何れにしても、結果として訪台は中国の台湾進攻や海上封鎖等の可能性を却って高めた。
- これを抜きにしても、ペロシ訪台とそれを黙認したバイデン政権には、具体的な戦略は無く、ペロシのレガシー作りとペロシ自身と民主党の中間選挙対策であったと推察される。
- 実際に台湾進攻等があれば、曖昧戦略や直接防衛力行使示唆にも拘わらず、バイデン政権はウクライナ型の代理戦争をするか、何もしないかのどちらかだろう。
- 米国はウクライナでロシアとの核戦争を避けるため直接参戦を留保している事を鑑みれば、ウクライナよりも核戦争に繋がる可能性が高い台湾で直接参戦する事はまず考えられない。
- ウクライナ型の代理戦争なら、当然ながら軍産複合体にとってウェルカムである。
- 日本は台湾への武器弾薬物資供給の拠点になるのみならず、存立危機事態として直接参戦を強いられる可能性が高い。
- 中国は、尖閣諸島等日本の領土を台湾進攻等に前後して取りに来る可能性もある。
- 代理戦争といえども、ウクライナ、台湾で2正面作戦を戦う事は無理があり、米国が勝ち抜ける可能性は微塵もないだろう。
- 中露疑似同盟を強化させた時点で米国は負けており、戦略無き挑発は単なる火遊びに過ぎない。米国は覇権を失うだろう。
- 米国を中心とした大戦略は、中露分断を画策し人類最大の脅威である中共政権に対しシームレスな包囲網を築き、戦わずしてその牙を抜く事でなければならない。
- これを実現するためには、恐らくは少なくとも共和党政権実現を待たねばならないだろう。
さて、こうした状況に対し、現時点で日本が直接に影響を与え動かせる余地には限りがある。
先ず日本がすべきは、危機対応体制にシフトする事である。防衛力倍増、核武装又は核レンタルの具体化、食糧安保(自給率倍増等)、原発再稼働、最新式小型原発の建設、因果関係不明なCO2地球温暖化説への過度な対応の停止、地熱発電等エネルギー開発による電力自給率増加、民間医療機関の再編公立化等による即応体制構築等々。
また、これらを推進する事により相対的かつ絶対的にも国力が増す事は、国土の価値が上昇すると共に経済安全保障にも資するだろう。進んではバーゲニングパワーを高め外交発言力強化にも繋がり、国際情勢を動かせる範囲が広がる。
日本には、これまでのような受動的態度で、木の葉のように国際情勢に翻弄され続けるのではなく、国際的大義を伴う長期的国益の追求を通し、混沌とした世界情勢に方向性を与え、新しい世界秩序をデザインし形にする義務の一端があるだろう。