旧統一教会と政治家の関係
7月8日の安倍元首相射殺事件を契機に、旧統一教会(現「世界平和統一家庭連合」)や系列団体と政治家との接点や関係が連日マスコミで大きく取り上げられている。報道によれば、旧統一教会やその系列団体と何らかの接点や関係を持った政治家は、立憲民主党や日本維新の会、国民民主党を含め多数に上っているが、とりわけ自民党の政治家が多い。大臣や副大臣・政務官等を含め数十名に上っている。
報道によれば、旧統一教会系「世界日報」へのインタビュー記事掲載、旧統一教会や系列団体の行事への挨拶電報、本人または秘書の出席、旧統一教会系団体への会費等の支払い、旧統一教会側からの選挙運動支援、旧統一教会側からの特定政治家への献金・寄付など、その接点や関係の具体的内容は多種多様である。
政治家の責任
このように、旧統一教会や系列団体と何らかの接点や関係を持った政治家は、濃淡はあっても与野党を問わず多数に上っている。そこで問題になるのは、政治家が旧統一教会や系列団体と何らかの接点や関係を持ったことによる責任の所在である。政治家が「広告塔」として、いわば旧統一教会に「正統性」を与え、その結果として信者を増やし、「霊感商法」などによる被害を拡大したとすれば、その政治的責任は免れないであろう。
その場合、旧統一教会側から実際に選挙運動の支援を受けた政治家と、そうでない政治家とはその責任の大きさにおいて違いがあろう。しかし、単に、電報を打ち、行事に参加し、系列紙に記事が載っただけの政治家も、政治家としての自己宣伝活動の一環として利益を受けているのであるから、その政治的責任を免れないであろう。
このように、旧統一教会問題に対する政治家の責任は、「霊感商法」などによる被害拡大への政治的責任であり法律的責任ではない。
「反共」が政治家との最大の接点
マスコミではあまり報じられていないが、与野党の多数の政治家が旧統一教会や系列団体と接点や関係を持った最大の理由は、「反共」の政治思想が一致したからであると筆者は考える。このことは接点や関係を持った政治家が自民党に圧倒的に多いことからも明らかである。旧統一教会系とされる「国際勝共連合」は共産主義反対を主張する政治団体として、日本国内でも数十年前から有名であった。
「国際勝共連合」系列の「世界日報社」では「反共産主義」の著作の出版も多い。それらによれば、いずれも、共産主義すなわち「マルクス・レーニン主義」を鋭く批判している。すなわち、マルクスの労働価値説、剰余価値説、階級闘争論、資本主義崩壊論や、レーニンの暴力革命論、プロレタリアート独裁論、日本共産党の革命路線などを徹底的に批判している(国際勝共連合本部教育部長清野清著「日本共産党を論破する」平成16年世界日報社刊など参照)。
こうした旧統一教会や系列の「国際勝共連合」が立脚する「反共産主義」の政治的思想的立場が、自民党など日本の保守系の政治家に大きな影響を与え、旧統一教会や系列団体との重要な接点になったと考えられる。
すなわち、接点や関係を持った多くの政治家にとっては、選挙運動支援等の具体的利益以上に、思想的立場の一致が最大の要因であったと筆者は考えるのである。この点はなぜかマスコミでも殆ど取り上げられていない。
「反共」の撲滅ではなく「霊感商法」の撲滅をすべき
このように、政治家と旧統一教会や系列団体との接点や関係が、「反共」という政治思想の一致によるものであるとすれば、両者は、憲法19条が保障する「思想及び良心の自由」の領域の問題であるから、政治権力が旧統一教会の思想の自由や思想宣伝の自由を取り締まるべきでないことは明らかである。
したがって、今後、政治権力が徹底的に取り締まるべきは、旧統一教会の「思想」ではなく、「霊感商法」などの社会的違法行為であり、その再発防止である。そして救済すべきはその被害者及びその家族である。岸田内閣の河野太郎消費者担当大臣特有の突破力と実行力に大いに期待したいものである。