今後3年間の政治課題(屋山 太郎)

Epitavi/iStock

会長・政治評論家 屋山 太郎

日本維新の会の代表に馬場伸幸氏が選ばれた。松井一郎前代表の推薦を含め8527人と圧倒的な票数で選ばれたのは、当選の仕方としては絶妙だ(2位は1158人)。党員の思想の幅が広すぎると、意見が集約できないという恐れがある。それでも維新は大変革を想定して、党内の考え方をまとめる努力をして貰いたい。

自民党は野党時代、中川昭一氏が亡くなって、保守本流の影が薄くなったことがある。当時、麻生太郎内閣は18%の支持率で潰れたが、後継となった谷垣禎一総裁時代の自民党の支持率は14%台だったという。当時、谷垣氏は朝日寄りの人かと思って、朝日の記者に聞いたところ「誰も分かりませんよ」と答えて笑っていた。実は自民党にはこういう類の人が多い。安倍氏亡き後、安倍派が党内の流れに神経質になっている所以だ。維新は政策や思想をいじり過ぎると本質を失うことがあると自覚して貰いたい。

幸い、国会は向こう3年間、政権側が解散しなければ十分に議論を交わす期間はある。まず自民党は、国民に約束した憲法改正に取り掛かって貰いたい。最初から憲法改正反対という共産党や立憲民主党の一部を排除して議論をしてはどうか。乱暴なことを言うようだが、欧州の政界では「議論をしない人」は排除するのが常識である。

日本共産党には「権力側に暴力を振るわれたら反撃する」という考え方がある。しかしヨーロッパの常識では、暴力無しで最後まで議論を追求するのが民主主義である。従って戦後、欧州の多くの国々では共産党の存在を認めていなかった。共産党と暴力が繋がっていたからだ。維新の台頭によって、暴力のない健全野党の選択肢ができた。共産、立憲の暴力に期待する必要がなくなったのである。

また長期の国会を使って是非、整理して貰いたいのは、得体の知れない「統一教会」問題だ。この問題に30年程前に首を突っ込んだ経験があるが、当初は“勝共連合”と名乗っていた。いつの間にか宗教団体なのか、利権団体なのか分からなくなった。当時は自前で金を集める中選挙区制だったから、金集めの1つと大目に見ていた。しかしその後に大々的な選挙制度の改正が行われた。当時は許された場合でも、今では完全なる違法行為の場合が多い。議員は実態を知らずに金集めを手伝っている場合も多いという。

戦後、国のカネは1銭でも全て財務官僚が見張るという考え方ができた。しかしこれでは政治家が全く金を動かせない。そこで安倍元総理は別口の財源を基に違う種類の予算を作ろうと考えた。このアベノミクスのやり方を続けたいのが安倍派の主流だが、財務省は岸田首相を動かして元に戻そうとしている。この勝敗を決めるのが審議官、次官級の人事である。内閣人事局を使って安倍派、財務省の見えざる戦いが起こっているが、財務省の言いなりになるな。

(令和4年8月31日付静岡新聞『論壇』より転載)

屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生まれ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、解説委員兼編集委員などを歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。著書に『安倍外交で日本は強くなる』など多数


編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2022年8月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。