日本酒の酒蔵がウィスキー?:日本酒は抱えたその欠点を克服できるか

中華料理店でテーブルを囲むと何故か青島ビールが欲しくなります。そして次に紹興酒でしょうか?韓国料理店で「お飲み物は」と聞かれれば、初めにCASSという韓国ビール、次に韓国焼酎(ソジュ)を飲むのはなぜなのでしょうか?心理的にそれが合うような気がするわけです。

では日本食レストランで日本のビールの後何を飲むか、と言われると必ずしも日本酒にならないのです。日本ならばサワーとかハイボールだし、こちらならワインです。これは私だけのし好の問題かと思えばそうではなく、「日本酒は次の日が大変だから」という声や日本酒のイメージがヘビードリンカーとか酒好きに聞こえるのでちょっと違うよな、という気もします。また飲んだ時、大吟醸ならばともかく、日本酒本来の味を求めた純米酒だと重たい味になってしまいます。

中国の紹興酒や韓国のソジュがおちょこに入れて飲む点で日本酒と似ているのですが、中国や韓国のそれは焼酎に近いすっきりした飲み口なので結構飲めてしまいます。もう一つ言えるのは白酒は別として紹興酒やソジュは安いのです。それに対して日本酒は高いことも飲まなくなった理由かもしれません。

日本通のスイス人と日本食レストランでハイボールを頼んだ際に店員さんが「お酒は何で割りますか?」と聞かれ、スイス人氏が「炭酸で薄めるんだから高いウィスキーは意味ないね。一番安いので結構です」と。おぉ、素晴らしいです。

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バーでウィスキーを頼むと「丸氷」が出てきます。私はあれが正直苦手なのです。理由は時間が経つとそれでもウィスキーが薄まるから。かといって氷でちょっと冷やした状態が欲しいわけです。家でウィスキーを飲む時は冷蔵庫の氷を2個だけ入れるというマイルールがあります。

ウィスキーの良さは芳醇な香りとオンザロックかストレートで1-2杯でスパッと終われるところでしょうか?おつまみ食べながらでもチョコレート食べながらでもウィスキーは合うというのも魅力です。だけど、食後に日本酒にはならないのです。昔のように一升瓶抱えて車座になって湯飲み茶わんで飲むのは思い出の一幕で終わってしまった気がします。

さて、最近日本酒の酒造がウィスキーを作り始めたと報じられています。技術的に日本酒造りと似たところもあることも後押ししているようです。日本のウィスキーは世界5大ウィスキーの一つで後発ながら非常に高いランクとなっています。醸造技術故なのだと思います。特にそのきっかけの一因となったのがイチローズモルトかもしれません。秩父の小さな醸造所で、量が少なく、プレミアムが付く大人気のウィスキーで飲み屋で一杯5-7000円ぐらいします。これに続け、というところもあるのでしょう。

最近はバンクーバーの酒屋にもジャパニーズウィスキーのコーナーがあるのですが、見たことも聞いたこともないような銘柄が増えてきています。価格も700ミリリットル一本で8000円程度(こちらはアルコール濃度により税率が違うためウィスキーは高いのです)でちょっと手が出ないのですが、クリスマスのギフトでは大変喜ばれるアイテムの一つです。

ただ、一時のブームに便乗した感は否めません。日本酒が若者から敬遠され、日本酒販売量が低下を辿る一方には日本酒メーカーがお手頃価格で飲みやすい日本酒を開発できなかったことある気がします。つまり、酒造は代々伝わるそのやり方から抜け出せないわけです。味を守ることは重要ですが、食文化や食生活が代わっていく中でどんな味なら食卓に並ぶ食事とマッチするのか、もう少し深掘りして新製品の開発をしてもらいたかったところです。

残念ながら我々は毎日刺身や焼き魚は食べないし、あえ物や乾きものもすっかり食べなくなりました。家庭でもレストランでもよりインターナショナルな料理が並びます。日本酒の最大の欠点は酸味がない点とされます。味覚のバランスで酸味は極めて重要なポイントでワインと比較できないともいわれます。

ならばその欠点を補いながらもどんな食事にでもあう日本酒がお手頃価格で出来れば何よりです。大吟醸をワイングラスで飲むのは素敵な飲み方だと思いますが、もう少しアルコール度数を下げて家庭の晩酌も気軽にできるようになれば新しい展開も期待できるでしょう。「へぇ、これが日本酒なの?」と思わせるような製品はできるはずです。誰もビールやハイボールでおなかがタポタポになりたいとは思っていないのです。よりおしゃれに飲める日本酒の普及が待たれます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年9月4日の記事より転載させていただきました。