街づくりと孤独孤立政策がつながるには:孤立する都市、つながる街

「都市において、緩やかに支え合える価値を生み出す場や活動は、必ずしも既存の遅延団体やボランティアに支えられるものだけではありません。むしろ、それを生み出す人や組織の関係性(つながり)を生み出す積極的な努力や仕掛けが必要で、同時に、つながりを持続させるビジネスモデルも多様に生み出されることが求められます」保井美樹, p17

「一瞬ですべり落ちる都市社会において、切れ目のない支援を行うためには、法律や制度、仕組みで紡ぐ網目は大きく、その網目を埋めるのはやはり私たち一人ひとりがいまより少しだけ周囲に対して目を向け、何かあれば声をかけていく。そんなちょっとした行動がつながる街をつくっていくのだと思います」工藤啓、p56

「豊中では、特に、ゴミ屋敷は社会的孤立の象徴としてこれまで500件以上の支援を続けてきました。個人に寄り添う個別支援を通じて、ゴミをためる本人を支える地域づくりを併せて行うという方法で、この取組は、『断らない福祉』として生活困窮者自立支援事業の開始とともに全国に広がりました」勝部麗子, p93

孤立する都市、つながる街」(保井美樹, 2019)

エリアマネジメントを専門としていた筆者を中心に、全国各地で社会的孤立の課題に関わる専門家がそれぞれの取組をレポートした一冊です。

工藤さんや勝部さんのように、いわゆる「断らない支援」である伴走型支援の実践家が寄稿しているのが特徴。保井さんは「ビジネスモデル」という言葉を使ってはいますが、「社会課題を事業が解決する」と単純に思っているわけではなく、孤立の現実も理解しながら、いかに持続可能にするかを哲学されていたようにお見受けしました。

残念ながら、保井美樹さんは昨年逝去されています。RCFでも関わっている遠野にも縁があったそうです。街づくりと孤独孤立政策を深く繋げられる方だったのだとお見受けしています。良い方が、先に立たれてしまいます。


編集部より:この記事は、一般社団法人RCF 代表理事、藤沢烈氏の公式note 2022年9月3日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は藤沢氏のnoteをご覧ください。