日本の拉致監禁問題はどうなったか

日本のメディアは現在、安倍晋三元首相銃殺事件後、事件の解明よりも、容疑者の母親が所属している宗教団体、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)へのバッシングを続けている。旧統一教会関連報道は視聴率が稼げるということもあって、テレビのワイドショーは情報の信頼性、客観性は二の次で元信者、元2世信者を招いては旧統一教会叩きに余念がない。その状況は中世時代の魔女狩りを彷彿させる。海外から見ていると、異常な情況だ。

「日本は宗教の自由の無法地帯だ」と語った「国境なき人権」代表のウィリー・フォートレ氏(2012年11月2日、ジュネーブの国連内で撮影)

12年5カ月間、拉致監禁された後藤徹氏(2012年10月31日、ジュネーブ国連内のサイド・イベントで撮影)

ところで、日本では共産党系の左派弁護士、容共の聖職者たちが統一教会の信者を本人の意思に反して拉致監禁してきた問題については、ほとんど報道されない。人権問題ではうるさいメディアも統一教会が絡んだ拉致監禁問題については沈黙してきた。統一教会の信者を拉致監禁することが大きな犯罪という認識に決定的に欠けてきたからだ。

旧統一教会信者を拉致監禁することは「信教の自由」、基本的人権への蹂躙だ。日本での旧統一教会信者の拉致問題で無策の日本の宗教事情について、著名な国際人権擁護グループ「国境なき人権」(HRWF)の代表、ウィリー・フォートレ氏は「日本は『宗教の自由』の無法地帯だ」と批判した。そこで10年前、ジュネーブの国連人権理事会で実施された日本の人権状況についての「普遍的・定期的審査」(UPR)を振り返りながら、旧統一教会信者の拉致監禁が犯罪行為であることを改めて指摘したい。

ジュネーブの国連人権理事会で2012年10月31日、日本の人権セッションのUPRが実施された。そこで注目された点は、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が国際人権組織「国境なき人権」(HRFW)の指摘した日本統一教会(当時)信者の拉致監禁問題をサマリーの中に明記したことだ。

国連文書で日本統一教会信者の拉致監禁問題が明記されたのは初めてだった。ちなみに、日本が2012年7月、OHCHRに提出した「UPR第2回政府報告」(全20頁)の中には「国境なき人権」が指摘した統一教会信者拉致監禁問題はまったく言及されていなかった(「日本の『人権問題』を追及せよ」2012年10月30日参考)。

当方は当時、ジュネーブの国連内で「国境なき人権」のフォートレ代表と会見し、統一教会信者の拉致監禁問題で質問した。同氏は日本を訪問し、統一教会信者の拉致監禁問題の現地調査を実施してきた。HRWF報告書は当時、日本人権セッションの審査の基本文書に採用された。

フォートレ氏は、「私は1年前、日本を訪問し、新宗教の統一教会信者が強制改宗者や家族関係者から棄教目的で拉致監禁された問題の現場調査を実施した。調査目的は、日本政府を含む多くの関係者が否定しているが、実際に行われている拉致監禁の証拠を見つけることだ。私たちは、過去5年間で拉致監禁された経験のある約20人とインタビューした。その結果、不幸なことだが、信者たちの拉致監禁は事実と判明した。ショッキングな点は、拉致監禁された信者たちがさまざまな迫害を受けているにもかかわらず、民主国家の日本の警察当局や法関係者が必要な対策を講じていないということだ。全く無法状況だ」と述べている(「日本『宗教の自由』の無法地帯」2012年11月3日参考)。

なぜ警察当局は問題の解決に乗り出すことを躊躇するのか、なぜ日本の主要メディアはこの問題を報じないのか、という当方の質問に対し、「私も驚いた。政府関係者ばかりではなく、メデイア、非政府機関(NGO)の人権擁護グループすらこの問題を完全に無視していることだ。調査開始前、日本の法律関係者、宗教問題専門家、大学教授ならば真相解明は簡単ではないかと考えていたが、そうではなかった。彼らはこの問題に関与することを拒否しているのだ」と答えた。

同時に、「日本社会では統一教会やものみの塔などの新宗教グループはポピュラーではない。われわれにとって重要な点は、個人の信仰の擁護だ。宗教の自由を奪われている人の保護であり、統一教会やものみの塔を擁護する考えはない」と指摘することを忘れなかった。

当方はジュネーブの国連内で開かれたサイド・イベントで12年5カ月間拉致監禁された経験のある統一教会信者、後藤徹(49)さんと初めて出合あった。後藤氏は、「自分は1995年帰郷した後、ワゴン車で拉致され、アパートの一室で12年間以上、監禁された。当時31歳だった自分は監禁から脱出した時、44歳になっていた。自分は人生で最も貴重な30代を外の世界を見ることなく生きてきた。拉致監禁は犯罪です。統一教会信者という理由だけで1人の人生を破壊できる権利は誰にもないはずですからね」と語った(「『30代』を奪われた男の決意」2012年11月2日参考)。

旧統一教会の資料によると、左派弁護士、既成キリスト教会関係者による旧統一教会信者の拉致監禁件数は4300件以上に及ぶという。これまでに被害に遭った信者の中には、監禁中のレイプ事件、精神病院への強制入院などの悲劇も起きている。

ジュネーブの「日本人権セッション」から10年の年月が経過したが、旧統一教会信者の拉致監禁事件は依然起きている。日本では左派系弁護士、メディアが旧統一教会信者の人権を堂々と蹂躙しながら、あたかも人権擁護者のように振舞っている。残念ながら、「日本は『宗教の自由』の無法地帯」といったフォートレ氏の発言は依然、間違っていないのだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年9月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。