「野菜・果物多く食べる人は長寿」は本当か?

黒坂岳央です。

野菜や果物を多く食べる習慣を持つ人は、そうでない人より20年以内に死亡するリスクが7-8%低い。

この研究結果を、国立がん研究センターと横浜市立大のチームが発表したという。詳細については横浜市立大学のプレスリリースを参照いただきたい。こうした研究においては欧米人を対象とするケースが多かったが、アジア人における20年間の研究という意義が大きいとする専門家も見られた。

しかし、この研究結果を見て「なるほど!とにかく野菜と果物を食べれば健康でいられるのだ!」と理解するべきでもないと考える。筆者はフルーツギフトの会社を経営してるので、フルーツへのバイアスを受けないように意識しつつその理由を論考したい。

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野菜や果物を多く食べるのはどんな人?

まず、この研究結果は決して「野菜や果物の効用や機能性」だけを示すものではないと、いう点に留意する必要がある。これはどういうことか?野菜や果物を好んで食べるような人たちの属性は総じて生活水準が高い傾向にあり、そもそも彼らは食事以外にも健康意識が強い可能性を考えるということである。

正直な話、野菜や果物はコストとカロリーの割合で考えた場合に、そのパフォーマンスは決して高いとは言えない。簡単にいえば、「炭水化物などと比べると、保存性、モバイル性に劣り、割高で腹が膨れにくい」ということである。

野菜や果物が比較的に健康的なことは誰しも知っていることである。だが、なかなか高くて買えない。調理する時間がない。長期保存できないため、計画的消費がネックになる。しかしそこを乗り越え、健康への意識が高い人達は食事以外にも、健康意識が高いと推測できる。体力や健康を維持するために運動をしたり、体に悪い飲酒やタバコを避け、ストレスも上手に発散しているだろう。結果的に彼らは長寿の傾向があるという考えである。

かつて、「酒は百薬の長」という言葉があった。だが、その後の追跡調査で「実は酒を飲めるのは生命力の強さの裏付けでもあるため、強い人が酒を飲んでいただけだった」という話があった。お酒は少量なら健康的、というミスリードに近い性質を内包しているかもしれない。

健康意識が強い人たち

上述した話ができる根拠の1つに、筆者自身がそうだからである。筆者は子供の頃、ジャンクフードを好んで食べていた記憶がある。しかし、栄養についての知識を得て、少しばかり気持ちや時間に余裕ができた今、食事にはとても気を使っているし、健康のために運動もするようにしている。面倒でも野菜や果物はたくさん食べるようにしている。

かつて、自分にとっての食事とは、「手っ取り早く、安く、お腹をいっぱいにする」という考えだった。しかし、今は「できるだけ長く健康寿命を維持するための手段」としての考え方もある。あまりに行き過ぎると窮屈なので、今でもときにはラーメンやジャンクフードを食べることもあるが、回数は厳しく制限するようにしている。

同じように生活水準が高い知人は、総じて健康意識がとても強い人たちばかりだという肌感覚がある。我が子の食事は野菜たっぷりだし、おやつは市販の砂糖入りのものではなくフルーツを食べさせる。最近では火を通さないraw foodと呼ばれる、 生食に励んでいるようだ。

火を通さないことにより、AGE(終末糖化産物)と呼ばれる老化物質の発生を抑えたり、植物の酵素や栄養素を効果的に摂るための食事だ。これらの準備は大変面倒であり、余裕がなければおいそれと手を出すことはできない。

つまり、生活水準が高い人ほど健康への意識を配る余裕を持ち、そうした人たちは野菜や果物摂取以外に長寿を可能にする健康インフラを整えている可能性もあるということだ。

お断りしておくと、筆者は決して「野菜や果物が死亡リスクが低いというのは間違いだ」といっているわけではない。おそらく、野菜や果物の栄養や機能性単体で考えても、この仮説はおそらく正しい。しかし、人体の健康は実に複雑系であるため、1点豪華主義的な発想で「とにかく野菜と果物だけ食べていれば健康は大丈夫」と考えることにはリスクがある。

健康でいるためには、多面的に気を配る必要がある。食事に気を使うのはもちろん、運動習慣や喫煙や飲酒習慣、孤独感がなくメンタリティも健全であるための生活基盤も必要だ。具体的に、何がどのくらい我々の健康に作用するのか?それはまだ明らかになってはいないし、さらなる研究結果が待たれる。

しかし、「野菜や果物は健康のために摂取しても良さそうだ」という結論が出た意義は決して小さくないだろう。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。