現金給付ではなぜ出生率が上がらないのか:『子育て支援の経済学』

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『単純な現金給付は、子どもの数を増やすとは限らないことがわかる。というのも、所得が増えて、子どもにかけられるお金の総額が増えた場合には、子どもの数を増やすこともできるが、子ども一人当たりによりお金をかけることもできるからだ。特に現代では、子どもの教育を重視する過程がかつてより増えているため、所得増は子どもの「質」の向上に向かいがちだ』 山口慎太郎『子育て支援の経済学』(2021)p17

「児童手当や子育て世帯に対する税制優遇措置は、妻の負担軽減に焦点を当てていないため、出生率の向上に十分な効果が発揮できないと考えられる。一方で、育児休業政策や保育に対する補助金等は、女性の子育て負担の軽減に特に効果的であると考えられるため、同じ費用のもとでも効果的な政策になると予想される」 同書 p71

ある勉強会で山口慎太郎先生の話を伺うことがあり、著作を読みました。経済学の観点から、少子化政策が分析されています。

例えば、現金給付について。子ども手当の増額や、子ども一人1,000万円といった政策が語られることがあります。ただし、現金給付をおこなっても、子ども一人にかける費用が増やしていくため、必ずしも二人目以降を生むインセンティブにつながらないと、経済学の観点から説明されています。むしろ、特に女性の出産や子育てにともなう負担を軽減を減らしていくことが必要だと主張されています。

総論としては少子化対策への支出を増やし続けるべきですが、効果が上がらなければ政策は続きません。どのような政策が真に効果を発揮するのか。あるいはどの政策では効果が上がらないのか。専門家・政治行政・メディアが意見を一本化していく必要があります。


編集部より:この記事は、一般社団法人RCF 代表理事、藤沢烈氏の公式note 2022年9月15日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は藤沢氏のnoteをご覧ください。