予約困難店の「予約権利オークション」サービスのニーズと危うさ

通常の方法では予約が取れない「予約困難店」の席予約の権利をオークションで販売するサービスが今月はじまるようです。

購入できるのは「席を予約」だけですから、店舗に来店した時は更に飲食費用を支払う必要があります。サイトにアップされているお店を見ると、確かに普通の方法では予約ができない超人気店ばかりです。

鮨さいとう(東京都港区)
鮨しゅんじ(東京都港区)
CHIUne(東京都港区)
たきや(東京都港区)
aca(東京都中央区)
グルマンディーズ(東京都港区)
晴山(東京都港区)
斎華(京都府京都市)
京天神野口(京都府京都市)

サイト運営をしている会社は、このサービスによって、お店には売り上げ上昇メリットがあり、原価率の向上を抑えるメリットがあるとし、飲食店の平均年収を底上げする可能性もあると強調しています。

また、売上の一部を新設された一般社団法人「Thanks for the food」に寄付することで、日本の食文化・食産業の発展に貢献するとも説明しています。

しかし、売り上げアップはお店が価格を上げることで簡単に対応できますし、一般社団法人への寄付もそれぞれのお店の判断で金額を決めれば良いことだと思います。

今回の新しいサービスの本質は「2重価格の導入」ではないかと思います。

予約困難店には、まだ人気店になる前からの常連のお客様がいるはずです。開業時からずっと通って応援してくれたような方に、人気が出たからといって価格を上げてしまうのは常連客の反感を買う可能性があります。

そこで、そのような長期のお付き合いのお客様と、一見でやってくる新規の人たちの間に「価格差」を設ける。そうすれば、常連客を引き続き集めながら、空き枠に入った一見客からはより高い料金を得ることができるという訳です。

お金を払ってでも、このような人気店に行ってみたいという富裕層はきっとたくさんいるはずです。

オークションで権利を購入して来店した人と、それよりも安い価格で来店することができる常連客で、お店がどのような対応の違いを見せるのか?

お店側の対応の仕方によっては、客層が変わりお店の雰囲気も、変わってしまうリスクがあるように思います。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年9月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。