「どうなる、株式市場と為替相場」と大見栄のタイトルにしましたが、これも一流紙が取り上げれば格好良く書くのでしょうが、私の見解ではほとんど信用されないでしょう。ただ、私も一応、株式投資歴47年、業務的にも為替との背中合わせという意味では市場参加者ですので大手の立派なアナリスト様達とは違う視点から考えてみたいと思います。くれぐれもこれは私の考えで将来のことは誰もわからないことを申し上げておきます。
私は「秋の相場に気をつけろ」と何度も申し上げてきました。なんとなく当たっているのですが、個人的にコツンとこないのです。今の下げは「パウエルショック」と称するFRBのあまりに強気な利上げ姿勢を受けた市場の軟化ですが、これは年初からずっと続いたトレンドであって、市場がサンドバック状態となりずっと打たれ続けているわけです。
チャート的に見るとアメリカの三つの代表的指標、S&P、ダウ、ナスダックともに今、端境期にあります。ダウは既に6月の安値を下回っているのですが、S&Pとナスダックは今、ギリギリのところにいます。ここで反発すればダウが6月安値を下回ったのはチャート的に「だまし」と解釈され、今の水準がボトムになります。
ただ、私がコツンとこないというのは「セリング クライマックス」と称する総悲観の状態が来ていないのです。真綿で首を絞められている状態でズルズル下げる嫌な展開です。よってここで反発せずに更に下げる確率が高いとみています。
では専門家はどう見ているかといえばほぼ二分されます。「下げ過ぎ派」と「まだまだ下げる派」です。つまり専門家ですら予想はつかないわけです。
こういう場合に市場を動かすのはより大きなニュースが出ることで方向性が決まります。それが直接的に市場ニュースでなくても構いません。例えばウクライナが休戦するとか、プーチン氏が行き詰まった、中国で政変が発生といったディープインパクトなものです。そのようなニュースが出ると市場は一旦、下げます。これは保守的株主がリスクヘッジをするためですが通常、数日以内に市場はニュースを消化し、基本的には都合の良い解釈をする、これが株式市場に人格を与えた場合の動きです。アメリカの市場は基本的にポジティブ シンキングの市場ですが、ボラティリティも高く、市場がギャンブル化している傾向も強くなっています。
そんな中、私が今日注目したの英国ポンドの急落(フラッシュ クラッシュ)です。一時的に5%下落し、年初からは既に30%以上下落、現在、米ドルとポンドはパリティに向かっています。理由の背景はトラス新政権が選挙公約通り、所得税下げ、法人税引き上げ凍結を発表したためです。私の7月25日のブログでトラス氏の政策について「ポピュリズム一徹」「彼女の手腕では英国をまとめることはできない」と書かせて頂きました。今、減税をすれば物価高を助長するのです。つまり真逆の政策です。
それを補うため、イングランド銀行は11月の政策会議ないし、緊急会合で利上げ幅を1.5-2.0%とするだろうと予想されています。英国はEUから離脱したために欧州本土より経済の振れ幅が大きくなりやすい状態です。その為の通貨防衛でもあるわけですが、仮に利上げをそんな幅で行えば英国は悪夢の大不況に戻ってしまいます。
為替については以前、米ドル主体の為替相場と申し上げました。マネーは世界を動き回りますが、金利の高いところ、基軸通貨という安全なところに動くという鉄則は何年たっても変わりません。ならば、パウエル氏を中心とするFRBが利上げペースを少し緩めるスタンスになるだけで円も含め「ドルへの金縛り現象」は心理的に解消されます。その期待はデータ ドリブンですので月初の雇用統計と毎月10日前後の消費者物価指数が現時点では最大の注目指数となるのです。となれば次回は10月7日が雇用統計、13日が物価指数ですのでそこまでネタがないということになります。
市場は目先、一旦、自律反発すると思います。但し、「Dead Cat Bounce」で本格的回復ではありません。個人的には13日の消費者物価指数が事前予想をある程度下回っていればFEDの強気スタンスは変わると予想されます。ならば0.75%の利上げではなく、かつ、先行き見通しもデータ次第というややトーンダウンとなるシナリオが描けます。株式市場は底打ち、年末に向かってじわっと上昇する期待はあります。為替も当然、ドル安に転じますが、円についてはそもそもの金利差が歴然としているので今しばらく円安バイアスを否定する理由は皆無だと思います。
今回のパウエル氏の利上げ姿勢はポールボルガ―氏を意識していると言われますが、私には日銀の三重野元総裁が重なって見えるのはなぜでしょうかね?ボルガ―氏も経済を壊してインフレ率を低下させたわけですが、世界経済は既にCOVIDで一旦壊れたばかりです。それに当時と今は世界のリンク状態があまりにも違い過ぎると思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年9月27日の記事より転載させていただきました。