東京都は太陽光パネルの設置義務化を目指している。義務付けの対象はハウスメーカー等の住宅供給事業者などだ。
だが太陽光パネルはいま問題が噴出しており、人権、経済、防災などの観点から、この義務化には多くの反対の声が上がっている。筆者も一都民として小池都知事宛に請願を出した。人権問題に関する部分を一部抜粋しよう:
中国政府によるジェノサイド・人権弾圧への加担を都民に義務付けることにならないか。
現在、世界の太陽光パネルの8割は中国製、半分は新疆ウイグル製と言われています。国際エネルギー機関の7月の報告によれば、中国製のシェアは今後更に上がり、95%にも達する見込みです。
他方で、新疆ウイグル自治区における少数民族へのジェノサイド・人権弾圧の証拠は、国際社会が認めるところとなり、ますますはっきりしてきています。先進諸国は軒並みジェノサイドを認定し非難決議をしています。国連においても、人権高等弁務官事務所が「深刻な人権侵害が行われている」などとした報告書を8月末に公表しました。
強制労働(ジェノサイドの一部)と太陽光発電パネル製造の関係もはっきり指摘されています。
米国では、ジェノサイドを問題視し、新疆ウイグル自治区で製造された部品を含む製品は何であれ輸入を禁止するウイグル強制労働防止法を6月21日に施行しました。
かかる現状において、東京都が太陽光パネルを都民に義務付けるならば、それは事実上、ジェノサイドへの加担を義務づけることになります。だがこれは私たち都民の望むところではありません。
これについて、先日、都議会で質疑があった:
都議会第3回定例会は29日、一般質問を行い、小池百合子知事は、一戸建て住宅を含む新築建築物への太陽光発電パネルの設置義務化に関連し、パネルが中国による人権侵害が指摘される新疆(しんきょう)ウイグル自治区製が多いとされることについて、「企業の責任ある人権尊重への継続的な取り組みを促進することが重要だ」との認識を示した。
自民党の川松真一朗議員の質疑に対する回答。知事は、国が策定したガイドラインを踏まえ、パネル製造業者に適正な取り組みと情報公開を促していく意向を示し、「人権問題がグローバルなサプライチェーン(供給網)での課題であるとの認識のもと、各国の状況を注視し、SDGs(持続可能な開発目標)を尊重した事業活動を促進していく」と述べた。
都は太陽光パネルの設置を義務付ける関連条例改正案を今年12月の定例会に提出し、令和7年4月の施行を目指している。
つまり東京都はハウスメーカーには「人権尊重」を求めている。これは新疆ウイグル自治区の製品・部品は使うな、ということだ。
だが太陽光パネルの世界市場の95%が中国製になる見通しだ。そして中国製の製品販売者に「新疆ウイグル自治区での強制労働に関わっていない証明」など求めても、そんな証明書が出てくるだろうか。あるいは、信用できるだろうか。何しろ、中国の太陽光パネル生産の半分以上は新疆ウイグル自治区である上に、中国は強制労働の存在自体を認めておらず、「完全な嘘」としているからだ。
すると世界シェアの僅か5%のパネルを国際的な争奪戦で競って買うことになるから、太陽光パネルの価格は暴騰するだろう。「建築主は損をしない」(この試算も大いに問題アリだが)という東京都の説明は前提が完全に崩壊する。
米国に続き、EUも新疆ウイグル自治区からの製品排除にすでに乗り出している。
東京都は令和7年4月の条例施行を目指しているというが、それまでには、米国に続いて、EUでも中国製の太陽光パネルが事実上すべて禁止になるだろう。
そのタイミングで、東京都が太陽光パネルを義務付けつつ「人権尊重」を求める、となると、どうなるか?
ハウスメーカーは暴騰した非中国産パネルを設置するので住宅価格も暴騰し、建築主もそれを買わざるを得ない。価格が高くなりすぎれば、住宅の購入を諦める人も出るかもしれない。
あるいは、事前審査が不十分で、事後に中国製パネルの設置が発覚したハウスメーカーは、世論の非難の的となり、経営が危機に晒されるかもしれない。
太陽光パネルを義務付けておきながら、人権尊重は「企業の責任」ということは、人権問題はハウスメーカーに押し付けて、東京都は知らぬふりを決め込むというのだろうか。
こんな義務付けはやはり撤回すべきだ。
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