ブラジル大統領選:ボルソナロ大統領とルラ元大統領の決戦投票の行方

世論調査を裏切る投票結果

10月2日のブラジル大統領選挙で世論調査とは全く異なる結果となった。11人の候補者の中での世論調査ではルラ元大統領が断然有利とされていた。1回目の投票でルラ氏が過半数を満たして決戦投票には至らないという予測もあった。

ところが、開票による得票率の結果はルラ元大統領が48.43%、ボルソナロ現職大統領が43.20%という結果となり、両者の差は僅か5.23%という僅差となった。10月30日に両者による決戦投票に持ち込まれることになった。(10月3日付「ラ・コンフィデンシアル」から引用)

なぜ予測が大きく外れたのか? 一番の要因は有権者が1億5640万人もいる中で世論調査の対象にされた有権者の数は2500人を上回ることがなかったということである。ブラジルは広大である。主要都市と地方の格差は大きく地方ごとに抱えている社会問題は異っている。各地方ごとにまんべんなく世論調査を実施すべきであった。

ところが、ルラ元大統領が現職時代に社会の発展に貢献した実績が今も高く評価されているという憶測のもとに彼を過大評価して支持率を上積みする方向で調査が実施されていたというのが今回の世論調査の予測が大きく外れた理由である。

そして自由経済を主張するボルソナロ大統領を支持する有権者が多くいることが無視されていた。と同時に社会主義者のルラ氏を嫌う有権者も多くいるということだ。例えば、企業家や軍人の間ではルラ氏を支持しない人たちが多くいて彼らはボルソナロ氏に票を入れた。

決戦投票に向けての戦い

決戦投票を前に先ず最初に両候補が投票するように説得を務めているのは今回投票所に向かわなかったおよそ3200万人と推測されている有権者である。即ち、20.95%の有権者が投票しなかったのである。投票を拒否した有権者の一部は現在の政治に失望しているということと政治が鮮明に二極化していることへの拒否反応だとされている。

しかし、今回の両者の票差6,183,011票を考慮すると今回投票を拒否した有権者の存在は非常に重要な存在である。

次に両者が自らの陣営に票をもらうべく説得に努めているのが最初の投票で3位(4.3%)の民主運動党シモネ・テベト氏と4位(3%)になった民主労働党ジロ・ゴメス氏の票である。この両者の票数はおよそ7.3%を占める。どちらかと言えば前者はボルソナロ氏に味方し、後者はルラ氏に回る可能性がある。しかし、今回の投票ではジロ・ゴメス氏に向かうべき票がボルソナロ氏に流れたという事実も確認されている。

ということで、ボルソナロ氏とルラ氏の決戦投票の行方は全く未知数である。

議会ではボルソナロ支持派が過半数を獲得

大統領選と同時に行われた一部の上下院選挙と地方議会選挙でもボルソナロ支持派が予想外の成績を収めている。下院ではボルソナロ氏の自由党が99議席を獲得し、議員数では最大の政党に飛躍した。

そして、中道派の6政党と自由党を合わせると下院は513議席の中で372議席を獲得。仮に、ルラ氏が勝利しても下院では不利な立場に置かれるのは必至だ。上院でも中道派と自由党を加えると52議席となるが、ルラ氏の連合政党は13議席しかない。(10月3日付「ポリティカ・ディヒタル・オンライン」から引用)

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