キューバの全土停電が続く理由:カストロの社会主義革命の結末

資金不足で発電所の改善もできないでいる

キューバを大型ハリケーン「イアン」が通過、1週間以上続いている全土の停電で市民の抗議が続いている。停電を解決させようにもキューバ政府にはそのための資金がないというのが真の理由だ。そのスタートはカストロ兄弟によるキューバ革命から始まった。

当時、米国の影響下にあったキューバの1950年代の一人当たりの牛肉の消費量はアルゼンチンとウルグアイに次いで3番目に消費量の多い国であったという豊かさであった。勿論、当時は米国の支援を受けた独裁体制下で米国の企業などが富を私有化していた。その政治体制を変えようとして起きたのがカストロ兄弟による社会主義革命だった。

ところが、その後のキューバは発展するどころか、逆にカストロ兄弟を筆頭に軍人による政治指導者層に富が集中し、社会主義による政治体制下では産業の生産性は向上するどころか、逆に衰退して行った。その為、国の経済を維持するために最初はソ連その後ベネズエラに寄生虫のごとく援助を頼って来たというのがこれまでのキューバが歩んで来た過程である。

そして今、ベネズエラが原油価格の下落から経済が後退し、キューバを援助できなくなりキューバの困窮が始まったということだ。だから火力発電システムも旧式で部品を交換するお金もないということなのである。

市民の抗議の理由は他にも

継続している市民の抗議はこの停電だけが理由ではない。停電は飽くまで抗議をする一つの動機となったもので、それ以外に長く市民が苦しんでいるのは食料難である。

政府に外貨が不足していることから食料が十分に輸入できないのである。しかも、生産性のないキューバ国内では農業も衰退してしまい国民を満たす食料も十分に生産できなくなっている。

しかもコロナによるパンデミックでキューバで重要な外貨の獲得源となっていた観光客の訪問も途絶えた。この影響で経済はますます衰退。政府は外貨の獲得源を失った。しかも、その燃料である原油はベネズエラから安価に入手していたが、ベネズエラの経済危機でその入手も出来なくなっている。

そして、今回のハリケーンの襲来でキューバの火力発電は強度の破損が発生。それを修理したいが、その為の資金はない。また新しい設備を導入しようにも同じく資金不足で出来ない。

これがカストロ兄弟が遂行した社会主義革命の結末である。