目標を設定す

ジェームズ・アレン(1864年-1912年)は『「原因」と「結果」の法則』の中で、次のように述べています――大きな目標を発見できないでいる人は、とりあえず、目の前にある自分がやるべきことに、自分の思いを集中して向けるべきです。その作業がいかに小さなものに見えようと、問題ではありません。そうやって目の前にあるやるべきことを完璧にやり遂げるよう努力することで、集中力と自己コントロール能力は確実に磨かれます。

そして上記の後彼は続けて、「それらの能力が十分に磨き上げられたとき、達成が不可能なものは何ひとつなくなります。間もなく、とても自然に、より大きな目標が見えてくるはずです」というように言っています。本投稿では以下、目標設定に関し私見を申し上げておきます。

先ず、目標の大小の整理からです。会社を例に言えば、売上目標・利益目標といった数字等は、小さな目標に当たります。他方、現況から掛け離れ未来へ向けた大きな絵(ビッグピクチャー)を明示的に描き、夢を具現化して行く或いは志を貫徹して行くといった類は、大きな目標に当たります。

一年位の短期的な数字目標の場合は、「形(実績)」と「名(目標)」が同じになる韓非子流のやり方、即ち「形名参同:けいめいさんどう」の目標設定を行うべきだと思います。人間ギリギリの時にこそ知恵が様々出てくるもので、あらゆる知恵と工夫を振り絞り必死になって努力に努力を重ねた結果、何とかギリギリで達成できる目標こそがベストだと思います。

イチローさんなども、次のように述べています――“目標”って高くし過ぎると絶対にダメなんですよね。必死に頑張っても、その目標に届かなければどうなりますか?諦めたり、挫折感を味わうでしょう。それは、目標の設定ミスなんです。頑張れば何とか手が届くところに目標を設定すればずっと諦めないでいられる。そういう設定の仕方が一番大事だと僕は思います。

ギリギリに設定した目標を超えた時に、自信が生まれることがポイントです。一度自信をつけることに成功すれば、次に困難に直面しても「きっと次の壁も乗り越えられる」と、その自信がより大きな目標を達成して行く原動力になるのです。目標が大きくなるに従って、戦略・戦術そして様々な知恵・汗といったものが必要になりましょう。

自信とは自らに対する信頼であり、困難を克服できた時初めて本物になるものです。「艱難汝を玉にす」という言葉がありますが、本物の自信を得たいと思うならば、形名参同の目標設定を行うのが一番です。自らへの信が大きくなり、世界はこんなにも広いものかと知れば知る程、ビッグピクチャーも描けるようなってくるのです。

冒頭ジェームズ・アレンが言うように、「大きな目標を発見できないでいる人は、とりあえず、目の前にある自分がやるべきことに、自分の思いを集中して向けるべきです」。形名参同の目標達成というのは先述の自信の他、次なる目標達成へと繋がる良き副産物を時として齎します。例えば良い人や良い商品あるいは良い取引先が、余計に集まるといった具合です。

そうやって自分の内外に生じる良き変化の結果として、より大きなスケールで物事が考えられるようなってきて、「間もなく、とても自然に、より大きな目標が見えてくるはずです」。そして、「自分が一体何をやりたいか・何をやるべきか」を常に考えながら大きな目標が定まるところまで辿り着くまで、努力し続けられるかがキーになります。初志貫徹して行くべくは、強い意志が求められるのです。


編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2022年10月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。