「一生結婚するつもりはない17.3%」
私が区議会議員を務めます中野区は子育てしやすい環境をつくるために様々な施策を講じております。
その理由として出生率の向上がありますが、施策による改善は見られず、子育てしやすい環境だけでは、根本的な解決にまで至らないのではと考えます。
そんな中、出生率向上のひとつの糸口になりえる調査が先日公表されましたのでご紹介させていただき、そこから中野区のような基礎自治体でも実現できそうな政策について論じていきます。
2022年9月9日、国立社会保障・人口問題研究所は、令和3(2021)年6月に実施した「第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」の結果の概要をとりまとめました。
【調査数】
独身者調査:配布調査票 14,011 票 有効票数 7,826 票(有効回収率 55.9%)
夫婦調査:配布調査票 9,401 票 有効票数 6,834 票(有効回収率 72.7%)
この結果は一部メディアで取り上げられました。
著者が注目した結果を以下に取りまとめます。
図1は18歳から34歳までの未婚の方にした調査で、未婚者の生涯の結婚意思です。
「いずれ結婚するつもり」と考えている未婚者の割合は、1997年の調査以降、比較的安定的に推移しましたが、今回調査では男女とも前回から減少し、18~34 歳の男性では 前回6年前の調査で85.7%だったのに対して4.3ポイントダウンの81.4%、同女性では 前回 89.3%だったのに対して5.0ポイントダウンし84.3%でした。
一方、「一生結婚するつもりはない」と答える未婚者は 2000 年代に入って増加傾向が続いており、今回調査では男性で 前回12.0%から17.3%、女性で8.0%から14.6%と大きく増加しました。
衝撃的な数字で、34歳以下で一生結婚するつもりがないと決断していることに驚きました。
これに結果的に結婚ができない、しない人を合わせれば、未婚率は相当高いものになるだろうと考えます。
同調査で、結婚時の理想の子どもの数は2.27人で、予定子ども数は横ばいの2.01人でした。
しかし結果的に2人以上の子どもを持てているわけではありません。
図2は妻の初婚年齢別にみた、結婚当時の予定子ども数と現実の完結出生子ども数の分布(結婚持続期間15~19年、サンプル数:953人)です。
上から妻の初婚年齢で、全体総数、25歳未満、25~29歳、30~34歳、35歳以上で左の棒グラフは結婚当時の予定子ども数、右が完結出生子ども数、つまり結果的に何人産んだかを表しています。
予定数よりも結果の方が少ないことがわかります。
妻の初婚年齢をみると25歳未満であると3人子ども産んでいる人が42.6%もおります。
平均は著者が算出した数値ですが、25歳未満で2.25人、29歳以下で1.88人、34歳以下で1.50人、35歳以上で1.23人と減少傾向です。
イメージすればすぐわかりますが、初婚年齢によって子どもの数が2倍程度異なることは重要な事実です。
図3は理想の数の子どもを持たない理由(予定子ども数が理想子ども数を下回る夫婦)です。
理想の数の子どもを実際には持たない理由としてもっとも選択率が高いのは「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」という経済的理由で、選択率は52.6%でした。
「子どもがのびのび育つ環境ではないから」を選択する割合は近年の調査ほど減っています。
妻が35歳以上の夫婦では、「高年齢で生むのはいやだから」「ほしいけれどもできないから」といった身体的な理由の選択率が高いです。
子育てと仕事の両立が困難という理由も挙げられております。
ある勉強会のヒアリング調査ですが、子どもを産むには高校・大学の就学費用が蓄えられるか不安でもう一人生むことができないといった回答をされる方が多かったとも聞きます。
人口維持をすること自体が正解かわからない世の中になってきましたが、国家、行政としては持続可能な運営をしていく上で、常に目標にしなければなりません。
しかし一生結婚をしないという男性17.3%、女性14.6%となっているような状況では、各家庭が2人ずつ子どもを産んでも人口は維持できません。多子世帯には3人以上産もうと思える環境を作り出す必要があろうかと思います。
施策としては、乳幼児とその家族の居場所をつくることはもちろん重要ですが、まずは体力的にはやはり早めに初産をしていただけるように女性の職場環境における保障制度をさらに拡充していく必要があります。
それは基礎自治体でやれることはないので国の政策のさらなる推進が期待されます。
そして、もし出産しやすい職場環境についてクリアし、若いうちに子どもを産みたいと思っても、高校・大学入学などの大きな費用に関して不安が出てくるところです。
若ければ、世帯収入が低い可能性が高く、将来的な見通しが立たない中で子どもを産むモチベーションが上がりません。
子どもの出生数が減少している要因が「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」という経済的理由で52.6%と明らかなエビデンスがあるわけですから、基礎自治体としてできることとしては、最も費用がかかる高校・大学の就学支援を推進すべきと考えます。
2020年4月から「私立高校授業料実質無償化」がスタートし、年収に応じて、高校無償化の制度があり、条件を満たして手続きを済ませれば、授業料が免除されます。ただ、高校生活にかかる出費が全て無料になるわけではありません。
まずは学校納付金、代表的なものとして入学金を支払わなければなりません。高校の受験料も無償化対象外となる学校納付金が必要で、公立だと3000円程度、私立だと1~2万円ほどかかるそうです。
ほかにも学級費やPTA費なども、私立高校の場合は、学校納付金に維持管理費に充てられる施設整備費用も含まれます。
ほかの出費として、制服の費用、通学用カバン、交通費、教材、修学旅行の費用、教科書以外の授業の必要経費として、体育、家庭科、音楽、美術などの実技科目で使用する教材費、パソコンやタブレットなどの購入もあります。
考え出したら不安はぬぐえません。
そこで中野区独自で奨学金制度の創設を2022年9月21日に開催された中野区議会決算特別委員会で提案させていただきました。対象は基本的に高校・大学入学時です。
23区の奨学金制度について調べ、23区中15区は区独自の制度があることがわかりました。
中野区は2011年度の制度の廃止をしたそうで、現在はボランティア団体である公益財団法人中野区教育振興会が寄付から賄った奨学金制度がありますが、月一万円と生活を支えるには厳しい金額です。
他区が月2万円以上、入学準備金などもあり充実したメニューであります。
今から子どもが欲しいと思う世帯に対して、金銭的な不安を取り除くセーフティネットとして、中野区も奨学金制度を含めた就学支援事業をすべきと考え、提案させていただきました。