中学受験生を持つ親たちは、そろそろ子どもの模試の成績に敏感になっている時期だろう。
拙著「すぐに結果を出せるすごい集中力」で自白(?)したように、私は中学生まではごくごく普通の成績の生徒だった。
学校群制度が導入された最初の高校入試で、2つの高校合わせて900人が定員だった。
私は中学校の中でも30番くらいをウロウロしていたので、実際の入試で900人中90番というのは(私としては)上出来だった。
上位10%と言っても、地方の高校なので地方の国公立大学に入れるかどうか危ういポジションだ。早慶などの一流私大などは論外だった。
ところが、高校に入学したところ、数学と英語の先生が怖くて頻繁に当てられたり、小テストがあったりした。
賢そうな女子生徒の前で恥をかきたくなかった私は、宿題と課題だけは何とかこなすようにした。
ちなみに、学校群でレベルが落ちたことで、数学の参考書は「緑チャート」(チャート式の最も平易なもの)を始めとして基本的な教材が指定された。
先生に叱られる恐怖と女子生徒の前で恥をかきたくないという(不純な)動機で、とにもかくにもこれらの基本的な教材にだけは取り組んだ。
不思議なことに成績は少しずつ上昇し、2年の夏には学年でトップになってしまった。
難解な参考書や問題集に手をだす余裕などなく、ひたすら(指定された)基本的な教材に取り組んだ結果に過ぎない。
その後も紆余曲折はあったが、私の依拠する数学の参考書は卒業するまで学校指定の「緑チャート」だった。
もちろん、雑誌や模擬試験などで応用問題も数多く解いたが原点は「緑チャート」だ。
それでも数学は私の最大の得意科目になり、模試では偏差値70以上をキープし、早大政経の数学は満点、東大の本試験では4問中3問を完答できた。
愚直なまでに基本に徹した(徹するしかなかった?)結果が、高いパフォーマンスにつながったのだ。
そういう意味では、怖い先生方と男女共学校で基本的な教材を指定されたことが、私にとっては幸運だった。
要するに、基本をしっかり身に付けることが何よりも大切だということだ。
柔道だって受け身に始まるし、テニスだって素振りが大切だ。それらの基本を疎かにしての上達はあり得ない。
娘の中学受験の時も、ミスターツカムの「基本問題を7回解けば数学は得意科目になる」と言う言葉を信じて、小6の娘に基本問題を解かせ続けた。
結果は、当時4回だった(と思う)の四谷大塚の模試で偏差値72を2回とり、最終回は総合順位56番だった。
「基本と集中力は何の関係があるのか?」という疑問を抱く読者もいると思う。
それに対して「サッパリわからない難問を突きつけられて、集中できるか?」と答えたい。
昔、週刊現代誌上で中学受験生を持つ親の相談を何回か行った。
小6の娘さんを持つお父さんが、娘さんに灘中の算数の問題を解かせていると言っていた。
確か「基本問題の繰り返しは忘れないでくださいね」とアドバイスした記憶がある(あくまで記憶だ)。
大人でも子どもでも、タスクに集中するためには基本をしっかり身に付けておく必要がある。
いきなりレベルの高い書籍を読んだり問題集に取り組んでも、絶対に集中はできない。
拙著では、(資格試験などに取り組むときは)最初は薄手で平易なテキストを一回しすることをオススメしている。
後は、問題をガンガン解いて知識を補充し、必要とあれば詳細なテキストを辞書代わりに使えばいい。
基本の繰り返しが集中力の前提になることを忘れないでいただきたい。
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編集部より:この記事は弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2022年10月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。