日本の水際対策もついに緩和され、東京の街中にも外国人が増えてきたように思います。
旅行会社や飲食店などは外国人のインバウンド需要に期待をしているようです。しかし、そのような動きと全く無縁の場所も存在するのです。
先週出かけた「もつ焼の聖地」とも呼ばれる宇ち多゛(うちだ)は、平日午後2時からの開店ですが、並んでいる90%以上が日本人、それもおっさんばかりです。ごくわずかに女性もいましたが、外国人は皆無でした。
そもそも外国人観光客は、宇ち多゛がある京成立石という葛飾のマイナーな駅にはやって来ません。日本人でも降り立ったことがある人は稀でしょう。
しかも、もしお店にたどり着いたとしても、注文の仕方がわからないでしょう。
この店は、串焼きのメニュが書いてなく、日本人にもよくわからない独特の注文方法があり、それを理解した上でテンポよく注文しないと、とても居心地が悪いのです。
店にいるスタッフは英語が話せるとは思えません。外国人であれば、常連客に連れてきてもらい、通訳してもらうくらいしななければ、注文をする事は極めて困難です。
そんなことを考えながら思い出したのは、10年以上前にパリに出かけたときのほろ苦い経験です。
現地のレストラン事情に詳しい人から、ローカルなビストロの名店を教えてもらい予約をして出かけました。
しかし、黒板に書いてあるメニューは手書きで読むことができず、スタッフはフランス語しか話しません。
仕方がないので、わからないまま適当に指を指して注文。地元の人たちの怪訝な視線がアウェイ感満載で、とても居心地が悪かったのを覚えています。
もし来日した外国人が京成立石に行っても、きっと同じ経験をすることでしょう。
それよりは、浅草のような外国人を暖かく受け入れてくれる観光地に行って、日本の文化を堪能した方が楽しく思い出に残るはずです。
日本人でさえ、初めて行くとなんだか居心地の悪い緊張感を強いてくるお店。
昭和の高度成長期のようなタイムスリップ感に満ちた、グローバル化とは無縁の閉鎖的な別世界です。
編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年10月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。