岸田総理と宮沢洋一自民党税調会長の無能ぶり

倉沢 良弦

私は宮沢洋一自民党税制調査会会長の発言を読み、真っ先にこいつは国賊だと表現した。

防衛費財源、法人増税は「選択肢」 自民・宮沢税調会長

今の岸田政権の最大の問題点は、内政にしても外交にしても、機を見るに敏な政治家がいないことだろう。

現在、必死に円安傾向に対して有る事無い事を流布し、再び円高、デフレの地獄に戻そうとする動きがある。その尖兵が日本経済新聞であり、日経を大本営発表に利用している財務省だ。

どうして財務省が常に日本経済再興を阻んでいるか?には、理由がある。民間企業は利益を上げることが目的であり、財務省官僚は徴税を行い財政規律を維持することが目的だ。つまり、財務省官僚は1円でも多く税金を徴収するアイデアを出し、それを実行した者が出世する。彼らは親方日の丸で、生活に困窮する国民のことなど微塵も考えてはいないし、国民の苦しみなどどこ吹く風くらいにしか思っていない。

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財務省は国の台所を預かるのだから、放漫財政など許すわけにはいかないのは理屈としては成り立つし、財政規律を設け、歳出を抑え込むか、政府の打ち出す政策を実現するための財源確保に頭を痛めるのは、彼らの仕事だし、財務省官僚がいるからこそ、日本国が健全に運営されていることは当然だ。

また、多くの在野の連中が勝手なことを言い、現在の金融緩和政策を批判して無知っぷりを晒しているが、ここではそれが間違いであることは敢えて触れない。言っても仕方のないこともある。

どう具体論を示して説明しても、分からない人には分からない。要は、何となくの不安感を言葉にして、誰かの責任に押し付けたいから、自民党政権を批判しているに過ぎない。

ここでは、今の所、日本は金融緩和策を維持しながら、財政出動をして景気浮揚を行うしかないことだけを指摘しておく。

その意味で、この円安基調を大いに利用していく政策を打ち出す必要があるに関わらず、宮沢洋一のごときは「防衛費を上げたかったら、増税させろ」と言っているのだ。頭が悪いと言うか、言うタイミングを見失った暴論と言わねばならない。

そもそも、マクロ経済学的な視点を誤解している人が多いのが、世界中がコストプッシュインフレ抑制のために利上げに向かっているからと言って、日本がそれに追従する意味は無いという点だ。日本はそもそも、インフレが過度に進行しているわけではない。アメリカのインフレとの違いは、金融緩和策の遅れと見た方がいいだろう。コロナショックによるコスト高やロシアによるウクライナ侵攻は、実は後付けだというのが、もっぱらの意見であり、コロナショック以前からアメリカはインフレ局面に入っていた。

日本のインフレ率の推移

アメリカのインフレ率の推移

元々、アメリカの場合は既にサブプライムローン問題や、リーマンショックを乗り切るための財政出動を行い、また市場の流動性を確保するための大胆な金融緩和を行ってきた。そのためアメリカ国内の雇用状況は好転したのだが、今からほんの10年前でさえ実は過度なインフレは起きていない。言い換えれば、金融緩和策は広範な求人を確保する方策として機能してきたと言える。

アメリカの名目GDP(自国通貨)の推移

問題は、現在の急激なインフレに対して実質賃金が追いついてないから、インフレ抑制策として利上げに踏み切ったのだが、これは諸刃の剣で、ドル高はGDPを押し下げてしまう効果が働くことになる。

経済学者のノア・スミス(Stony Brook University:assistant professor of finance)は、FRBの利上げ政策について、このままの利上げ政策の継続は、実質賃金の低下と失業率上昇の懸念を指摘している。

How much will beating inflation hurt American workers?
The question on a lot of people's minds.

パウエルFRB議長の舵取りが重要になってくるが、現実的には利上げは後退するのではないか?というのが私の見方だ。と言うのもいかにこれまでのアメリカの株価上昇が異常だったとしても、今年に入ってFRBが利上げするのでは?と言う憶測で大きく値を下げた株価は、ちょっと下がり過ぎの様相もある。これはそのまま消費意欲の減退を表していて、反動が来る可能性があるとすれば、利上げ政策を止める時だ。

一方で、より一層対中経済制裁を強硬に進めるバイデン政権は、アメリカ国内企業に対して人材流出、技術移転の可能性について更に制裁を強める方針で、これに対し、アメリカの半導体メーカーは基幹部分の技術者の中国撤退を発表した。

米半導体製造装置メーカー、中国事業一時停止 新規制の影響見極め

このニュースは中国国内で大きく取り上げられた様子は無いが、明らかに中国国内の半導体産業の大きな痛手になることは間違いない。今のところ、台湾の半導体企業の撤退は進んではいないようだが、仮に少しでも中国共産党が台湾に触手を伸ばす具体的な行動に踏み切った場合、台湾企業は中国本土から撤退するだろう。そうなると中国は自前の半導体を内製化しなければならないが、そもそも、基幹部分の技術はアメリカと台湾頼みであり、仮に特許侵害等で国際的な取引にさらなる強硬な規制がかかると、中国製品の大部分の輸出が不可能になる。

加えて、香港ドルの米ドルペッグでアキレス腱を抑え込まれている中国は、一層、身動きが取れなくなるだろう。これらの問題は、ほとんど報じられることが無いし、また不動産バブルの崩壊と併せて、実は中国経済はガタガタの状態で、習近平が3期目の共産党総書記になった場合、中国経済は更に悪化することが予想される。

こういった状況の中で、宮沢洋一の発言は、円安による景気浮揚に水を差す発言であり、日本の製造業各社がチャイナリスクで迷走している中、有り体に言えば「中国サマから逃げるなよ」と言っているようなものだ。

安倍元総理はサプライサイドの再構築に予算を設けるので、企業それぞれが様々なリスクを回避することを模索してほしいと言っていた。流石に安倍元総理が現在の円安を予測していたとは思えないが、少なくとも円安は日本の製造業にとって利点しかない。

本来であれば、政府は畳み掛けるように政策を打ち出さねばならないところだが、岸田総理は子ども食堂の実態を聞いて回ることや、旧統一協会問題で自民党議員を調査することは積極的に行うのだが、日本経済全体の舵取りは出来ない。

支持率低迷が旧統一協会問題だと思っていたら大きな間違いで、政治手腕が足りないから支持率が上がらないのだ。

何より、それを岸田総理自身が一番理解していない。岸田文雄は、優秀なリーダーの下では力を発揮するが、彼自身はリーダーの器ではない。