数か月前に予約しておいた大門にある和食屋さんにランチに出かけました。
現場を仕切る大将のパフォーマンスで、次々と料理が振る舞われていくお店。数ある高級和食店の中でも、季節の最高級素材をふんだんに使い、お会計も最高レベルの有名店です。
カウンターで食事をしていると、ちょっとした事件が起こりました。厨房の不手際で、私だけ料理が一品飛ばされて出てこなかったのです。今回の目玉の1つである京都丹波の松茸(写真)の焼き物です。
スタッフにそのことを伝えると、大将が慌てて平謝りしてきました。客に指摘されるまで気が付かず、完璧な接客ができなかったことを恥じているように見えました。
そして、店のソムリエにバックヴィンテージのブルゴーニュ白ワインを出すように指示。おいしい2003年の白ワインをグラスでサービスして頂きました。
すっかり気持ち良く良くなって、そのワインを飲み終わると、ボトルをカウンターの前に置いて、2杯目もサーブしてくれます。何と、結局1本丸ごとサービスしてくれました。
出てこなかったお料理も順番は変わりましたが、後からしっかり食べることができましたから実害はありません。にも関わらずの、この大盤振る舞い。
ワインの味わいが素晴らしいだけではなく、その心遣いにテンション爆上がりです。
小さなエラーによって、客のテンションを下げないようにするために最大限の努力を惜しまない。
ワインのお礼を言うと、大将は「ピンチはチャンス」と笑顔でした。
対応を間違えればクレームとなって二度と来ないかもしれない状態を、機転の利いたサービスで、逆に満足度を高めてしまう。
これぞ一流の証、と感心した次第です。
この手の高級店で最も大切な事は、気持ちよく時間を過ごし、気分良く帰れることです。
食事や料理が美味しくても、店主が威張っていたり、客が気を遣わなければいけないようなお店は、気分が良くないので行きたいとは思いません。
名物のかき氷で食事が終わると、なんだか今までで一番美味しかったような気がしてきました。人間の感情とは、そんなものです。
編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年10月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。