今週は米国大手ハイテク企業の第3四半期の決算が相次ぎますが、その中で注目されるのがFacebookを運営するMETAの業績だということです。
新技術にはとんと疎い当方ですので、METAが注力しているメタバースなるものが、バーチャルリアリティの進化形だろうな、ぐらいの知識しかないのですが、どうやら業界的には不評のようで、METAの経営にも影響が出ているようです。
それを知ったきっかけは、先週のCNBCの「Facebookのシャトルバスの運転手が仕事を無くしてる」という記事でした。CNBCの取材によると、Facebookのシャトルバス運行を請け負っている大手請負会社2社だけで160人ほどがレイオフされるという話です。運輸業界などの組合員を擁する Teamsters Bay Area Local 853によると、他の請負業者でもレイオフが行われていて、それらは全てFacebookによるものだそう。
シリコンバレーにハイテク企業が集まり、サンフランシスコはじめ、周辺に技術者が集中しているため、通勤用に各社が無料のシャトルバスを用意している、という話は知っていましたが、こともあろうに世界一のソーシャルメディアプラットフォームFacebookがシャトルバス廃止に動き出すとはどういうわけか?、と興味を惹かれたのです。
記事の後段には、METAの広報の「マクロ経済の課題と、会社の全般的な業績不振に対応して、今後数ヶ月で10%以上のコスト削減を目指して人員削減を行なっている」というコメントがありました。
そこで株価を見るとひどいことに。昨年9月24日には379ドルだったものが昨日10月24日には128ドルまで下がっています。3分の1になってます。
こうした中、地元メンロパークとボストンに拠点を置くAltimeter Capital Management というヘッジファンドのブラッド・ガースナー(Brad Gerstner)CEOが昨日24日にMediumにMETAのMark Zuckerberg氏宛の公開書簡を公表して、話題になっています。
要旨はヤフーにもロイター電の紹介で載っていますが、ガースナー氏は、今のMETAについて「人が多すぎて アイディアが多すぎて 緊急性が少なすぎる」と酷評、具体的には、過去4年間で2.5万人から8.5万人まで膨れ上がった従業員について、来年1月1日!までに人件費を20%減らすことを第一に求めています。
そして、メタバースについてこう言い切ります。「人々はメタバースが何を意味するのかさえも分からず、混乱している」と。
そのメタバース プロジェクトに「年間100~150億ドルの投資を行い、結果が出るまでに10年かかる可能性があると発表している。未知の未来への推定1,000億ドル以上の投資は、シリコン バレーの基準から見ても、超大規模で恐ろしい」と、Facebookの存立にも関わる問題だと警告し、投資額を年間50億ドル以下にするように求めています。
この書簡公表を受けたマーケットの株価推移はこうです。
今日の日経新聞もこの書簡に触れ「NY株ハイライト 相次ぐハイテク決算、鬼門はメタ 経営改善促す声も」とする記事で、「メタ株が一時上昇したのはアルティメーターの指摘に賛同する投資家が少なくないことの表れだろう」と書きました。
果たしてガースナー氏が求める大幅な人減らしを「正月までに」出来るのか、一般には「よく分からないメタバース」への巨額投資にブレーキがかけられるのか。世界30億人が利用する巨大プラットフォームといえど苦労が絶えないんですね。
編集部より:この記事は島田範正氏のブログ「島田範正のIT徒然ーデジタル社会の落ち穂拾い」2022年10月25日の記事より転載させていただきました。