超過死亡の原因はコロナかワクチンか

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(モンテカルロシミュレーションで検証 連載54)

日本の超過死亡者が急増し、それがコロナ死亡者と対応していないので問題となっています。

図1 超過死亡者(朱領域)とコロナ死亡者(左)、ワクチン接種者(右)との比較

図1に示すように、超過死亡者(朱領域)は時間的にピーク構造を持ち、2021年4月からコロナ死亡者の推移と同期しています(図1左)。しかしながら、その中でコロナが死因とされているのが全体の1/4に過ぎません。残りの超過死亡者はどこから来るのでしょうか。

図1の右側は、超過死亡者とワクチン接種者を比較したものです。昨年は相関が見えませんが、今年の第6波では、3回目のワクチン接種者と超過死亡者が同期しているように見え、ワクチン原因説のひとつの根拠になっています。

以下では、超過死亡者数とワクチン接種数の相関の問題点を指摘します。

1.ワクチン接種による即死ではない

図1の左側では超過死亡者とコロナ死亡者を直接比較しています。一方、右側では超過死亡者とワクチン接種者、つまり死亡と死亡に至る起因となる接種者の推移を比較しています。右側の場合、接種後の即死であれば、このまま比較することは可能ですが、即死のような短時間での死亡が多く起こるとすると、世界的に報告されているはずです。

従って、ワクチンが超過死亡の原因であるとすれば、ワクチン接種後、複雑な要因が関与し、複数のプロセスを経て死に至り、接種から死亡まで時間がかかります。

これをシミュレーションします。接種から死亡までのプロセスを、コロナ感染から入院、そして死亡のプロセスと同様に確率過程として扱います。その時のパラメータは半減期です。次のプロセスに移行するまでの時間で、母集団の半分が移行する時間です。

図2 超過死亡者(朱領域)とワクチン接種を起因とする死亡者の比較

図2は、ワクチン接種の日毎変化はデータを使い、死亡までの半減期を2週間(左図)、4週間(右図)として計算した死亡者数の日毎分布(青線)です。大きさは第6波の超過死亡者のピーク値にスケールしています。こうするとピークの半値幅(ピークの半分の高さでの全幅)を直接比較できます。

もともと第6波では、ワクチン接種の推移の半値幅が超過死亡の幅を上回っていたのですが、死亡までの時間経過を考慮した場合、更に幅は広がって、超過死亡とワクチン接種の相関は崩れてしまいます。

少なくとも、青線は超過死亡を超えることはないので、青線を超過死亡の分布内に収まるようにスケールしなければなりません。そうすると、超過死亡に占める割合は小さくなり、ピークを形成する主要因にはなり得ません。

この議論については、藤原かずえ氏から、ワクチン接種は高齢者から進められ、また、死亡に関係するのはほとんどが高齢者なので、高齢者に特化して相関を検討すべきという御意見をいただいたので、やってみました。

図3 ワクチン接種の年齢別推移(左図)、高齢者のワクチン接種を起因とした死亡者分布(右図)

左図は厚労省の年齢別(65歳以上以下)のワクチン接種推移です。65歳以上の3回接種(右図赤線)から半減期4週間で計算した死亡者分布(青線)です。

赤線自体は幅も狭く超過死亡者の分布とよく重なっていますが、これから起因される死亡者の分布は、やはり、大きく広がって相関が崩れてしまいます。

2.ワクチン接種はコロナ感染拡大の原因になっているか

超過死亡ワクチン原因説の元になったのは、第6波と第7波のコロナ感染拡大とワクチン接種の拡大が重なったため、両者の相関は単なる偶然とは考えられないというものですが、この機序をはっきりさせるためには、超過死亡とワクチン接種の比較と同様に、比較するものの範疇を同じにしなければなりません。

超過死亡とワクチン接種の場合は、死亡という事象に合わせるためにシミュレーションを使って、ワクチン接種から半減期を仮定して死亡日分布を求め比較しました。ここでは第6波、第7波の陽性者分布から、シミュレーションを用いて感染日分布を求め比較しました。

図4 ワクチン接種の時間推移と第6、7波のコロナ感染日推移

図4で、赤線が求めた第6、7波での感染日推移、水色線がPCR陽性者分布です。第6波ではワクチン接種が陽性者の拡大より少し遅れて上昇していますが、第7波では、ワクチン接種と陽性者の拡大は同期しています。

この点からワクチン接種により感染の拡大が誘引されているという意見がありますが、ワクチン接種との機序を議論するならば、コロナ陽性日(水色線)ではなく、コロナ感染日(赤線)を比較すべきであり、この図より、第6、7波ともコロナ感染がワクチン接種に先行しています。

3.結論

超過死亡のワクチン接種原因説については、超過死亡のピーク構造の幅の議論から、ワクチン接種との相関は崩れていること、第6、7波におけるコロナ感染拡大についてのワクチン接種原因説については、感染期日がワクチン接種期日より先行しているので、ワクチン接種が原因とは言えないことを示しました。

超過死亡の問題点は依然解明されるべき問題として残っています。図1左から分かるように、コロナ感染及びそれに伴う死亡、もしくは、それと同等のプロセスが主たる要因として関与していることは想像されるのですが、具体的にそれが何なのかはまだ判明していません。