予約困難店の寿司職人が毎日やっていること

定期的に通うお気に入りの寿司店が東京の紀尾井町にあります。美味しいお寿司とワインや日本酒とのペアリングが素晴らしく、毎回進化を続ける名店です。

先週こちらのお店に出かけた際、いつも握ってくれる大将の真正面の席に座ることができました。間近でお寿司を握る姿を見て気がついたのは、爪が極めてきれいに手入れされ、手も清潔感にあふれていることでした。

聞けば、自分でネイルのケアをし、さらに手も薬用のクリームで保湿をし、寝るときには毎日手袋をしているそうです。手が荒れると思い通りのお寿司が握れないからだそうです。

そして、お店がお休みの日であっても、必ず包丁を始めとする道具を触るようにしているとの事でした。

毎日道具を使う時間を確保しないと、繊細な包丁さばきの感覚が鈍ってしまうからだそうです。

ピアニストが1日練習をサボると回復するのに1週間かかると聞いたことがありますが、それと同じです。

このような細部にこだわる努力をお店にいる時だけではなく、日常生活でも徹底し、それを継続する。そんな20年に渡る努力の積み重ねによって、現在の頂点があるのだと納得しました。

かつて、お寿司の修行の世界は「飯炊き3年握り8年」と言われていました。ところが、最近では寿司職人養成学校ができ、最短2ヶ月で寿司職人になることができるそうです。

確かに、それなりのお寿司を握るのは、短期の集中練習でも実現可能なのかもしれません。回転寿司に行けば、すぐに寿司職人として仕事が始められるでしょう。

回転寿司のようなカジュアルに楽しめる手軽なお寿司を否定はしません。でも、それは野球に例えれば、草野球のようなものです。

そのようなお寿司と、長期間の修行から生まれるメジャーリーグレベルのお寿司は全くの別物です。

長い期間に渡り技術を磨き、日々の欠かさない鍛錬と節制した生活スタイルによって、常人には到達できない圧倒的な満足度を提供することができるのです。

だから回転寿司の10倍以上のお金を払ってでも食べたいという人たちがお店に殺到し、予約困難店になるのは決して不思議なことではありません。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年10月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。