テンセントやアリババが国家管理になる?

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テンセント、アリババ、京東の中国デジタル企業ビッグスリーが示し合わせたように、国有企業との提携を発表した。全容も背景も今はハッキリしないが、3期目習近平政権による「混合所有制改革」の新展開ではないかという観測が生まれている。

テンセントと中国聯通が設立の新会社が承認
11月2日、騰訊(テンセント)と中国聯通(チャイナ・ユニコム)が設立する混合所有制の新会社が承認されたとのニュースが注目を集めている。国家市場監督管理総局が10月27日にサイトで発表した関連文書に

ただ、そこで取り沙汰されている「混改」には暗い含意がある。

1954年、全土を掌握し朝鮮戦争の難局も乗り越えた毛沢東政権は、抗日戦争と国共内戦の過程で世話になった民族資本家たちの企業を「公私合営」の名前の下でどんどん接収し始めたのだ。「釣った魚に餌は要らない」じゃないが、共産シンパの資本家には「話が違う」という不満が沸き起こったが、後の祭り…

という前史があるので、2期目習近平政権が混合所有制を改めて推進すると謳った時に、「公私合営」の再来ぢゃないのか?という不安が生まれた訳。

この新しい動きがどれくらい「左巻き」のイデオロギー色を帯びるかは未知数だが、ハッキリしていることは、中国のデジタル経済はますます国家管理の色彩を強めるということ。

2020年秋、アリババ ジャックマーのシバキ上げから始まって、中国のプラットフォーム企業達は、独禁法違反の疑いかれこれで厳しく締め付けられた。それまでの各社が独占的な地位にモノを言わせてやりたい放題だった気味があったから、自業自得な側面もあったが、「新第四権力」になり始めたプラットフォーム企業に対して、共産党が経済力、政治権力の両面で強い危機感を覚えて「分際をわきまえろ!」とばかり、力で組み伏せた感があった。

それ以来、各社はすっかり元気を無くして業績も株価も凋落した。IT産業、デジタル産業全体も往時の活気と勢いを失った。そのせいで今や中国デジタル産業は人員整理が進行、若者の失業増大にも繋がっている…ということで今年初めから今度退任する劉鶴副総理あたりが奔走して、プラットフォーム叩きの行き過ぎを是正して「健全な発展を促す」軌道修正が行われた。

しかし、そういう行き過ぎを戒める役割の劉鶴副総理も引退する。そこへ来て、この発表だ。「提携」がどれくらいのスコープかはまだ分からないが、中国のプラットフォーム産業がいよいよ国家管理の下に置かれる流れはますますはっきりしてきた気がする(本件、新しい情報があれば、続報します)。


編集部より:この記事は現代中国研究家の津上俊哉氏のnote 2022年11月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は津上俊哉氏のnoteをご覧ください。