日本は旅客機でも中国に勝てない

gremlin/iStock

結論から言えば、将来中国製旅客機はボーイング、エアバスにはかなわないまでも、世界の旅客機市場の一角を占めるでしょう。

対して我が国の旅客機産業は絶望的です。

理由は簡単で日本の政治家、官僚、メーカーが無能だからです。運は全く関係ない。潜在的な能力はあったが、無能だから破れるべくして敗れたわけです。

中国国産機C919、近く就航へ 針路に潜む3つの乱気流

中国国産機C919、近く就航へ 針路に潜む3つの乱気流
【広州=比奈田悠佑】中国の国産旅客機「C919」が近く就航する。開発した中国商用飛機(COMAC)は8日開幕した中国国際航空宇宙博覧会(珠海エアショー)でデモフライトを披露。年内に航空大手の中国東方航空に機体を納入する見通しだ。旅客機市場で最も需要が多い機種の開発完了は同国航空機産業の大きな節目となる一方、部品の4割は...

中国の国産旅客機「C919」が近く就航する。(中略)旅客機市場で最も需要が多い機種の開発完了は同国航空機産業の大きな節目となる一方、部品の4割は海外に依存するなど課題は残る。

COMACは2016年に78~90席の小型ジェット機「ARJ21」の商用飛行にこぎ着け、国内の地方都市間で運航中だ。今回のC919は160席前後と一回り以上大きく、同程度の欧州エアバス「A320」や米ボーイング「737」が競合となる。

戦略機種の開発は、中国共産党の威信がかかる。07年8月、党の最高指導部を指す中央政治局常務委員会がプロジェクトを正式承認して開発がスタート。当時、COMACが本拠地を置く上海市のトップは、習近平(シー・ジンピン)国家主席が務めていた。

習氏も大きな期待をかけてきたC919。ただ、安定した受注や供給体制の構築に向けた視界の先には、3つの「乱気流」が潜む。

まず1つ目が、根本的な競争力の有無だ。旅客機では安全性のみならず、運用コストが大きな焦点となる。例えば旅客機の操縦にはパイロットが原則機種ごとにライセンスを取得する必要があるが、時間や費用がかかる。

次に、輸出に向けた高い壁がある。C919は22年9月、中国航空当局から安全性の証明を取得したが、効力が及ぶのは原則国内のみだ。安全性の証明は米欧当局がデファクトスタンダード(事実上の標準)を握っており、米欧の動きに実質的に追随する国が多い。

C919の輸出にはこうした証明取得が必要になる。ただ米欧では航空機産業への保護姿勢が強く、中国機が海外市場に打って出るのは現状では難しい。当面は中国国内の航空会社がC919を買い支えることになる。

そこに、新型コロナウイルスが立ちはだかる。中国が掲げる「ゼロコロナ」政策を受け、航空市場は長期の低迷に苦しむ。

3つ目にあるのが、部品の海外依存だ。C919の主要サプライヤー約40社のうち、4割が海外勢で占める。残る6割の企業にも、外資との合弁が含まれる。特にエンジンは、米ゼネラル・エレクトリック(GE)と仏企業の合弁メーカーからの供給に頼らざるを得ない。

COMACや中国政府も手は打っている。例えばエンジンについては軍用航空エンジンなどを手がける国有企業が開発に着手している。近く本格稼働する宇宙ステーション「天宮」でも、航空産業で求められる高性能合金の研究を進める方針だ。

旅客機産業は「航空宇宙強国」を目指す中国にとって、重要なピースだ。旅客機の基本設計は、早期警戒管制機や空中給油機といった軍用機への転用も可能で、開発速度の向上とコスト削減につながる。

要は国家に旅客機産業を必ず成功させるという強い意思と戦略的な計画があるかどうかです。エアバスだって長期にわたって国家の補助をうけて、黒字化するまで30年かかりました。当初弱小のフランス(後に、ドイツやスペイン、英国も参加)がボーイングやマグドネルダグラス、ロッキードに伍したジェット旅客機を開発して世界で相応のシェアを握るというのは設立当初はかなりの冒険と思われました。

無論幾度も危機はあったのですが、それを乗り越えてきました。そこには政府の厚い援助もありましたが、メーカーの努力もありました。

対して我が国ではYS-11の失敗で懲りて、その後は旅客機から撤退です。ボーイングが747の開発で傾いたときに737の製造権を買ってくれと日本に打診したことがありましたが断りました。

本来軍事で世界市場の出られない日本の航空産業は民間機にしか活路がなかったはずです。ところが防衛省におんぶにだっこで企業マインドと緊張感を失ったメーカーが、国営企業同様に惰性で商売を続けてきました。ですから重工三社、新明和で航空事業の統合すらできなかったわけです。

小さな規模のメーカーで二社も大型機を製造するメーカーが並列している事自体が奇怪です。

そして三菱重工が自信たっぷりではじめたMRJ(後のスペースジェット)は夜郎自大な思い込みと、市場経済を知らない同社のナイーブさで頓挫です。国もすぐに及び腰になりました。

これは始めに申し上げた通り、政治家、官僚(主として経産省、防衛省)、メーカーに当事者意識と能力が欠如していたからです。

駄目な人たちというのは危機に落ちいいたときに、呆然自失してしまって対策を取ったり、石にかじりついても挽回する意思がありません。それは無能ということです。失われた30年で没落した日本企業は皆同じ体質です。

それでも途中から巻き返すのであれば、型式、耐空証明が取れるまで、自衛隊機として採用するという手もありました。政府専用機、空海自の電子戦機、更にノースロップ・グラマンと共同でE-2Dのシステムを移植した早期警戒機の開発などを行えば15年ぐらいそれでメーカーは食いつなぐことができ、その間に型式、耐空証明を取ることも可能だったはずです。仮にMRJがさほど売れなくとも、次につなげることにはなったはずです。その芽を自ら潰してしまいました。

かなりのコストをつぎ込んでも国産旅客機が事業として成立すれば極めて幅の広い裾野の日本の中小企業にも仕事が増えます。それは日本の工業のボトムアップにも繋がります。

電気自動車の普及も将来は予想されて、自動車産業の仕事が減ると予想される現在(ぼくは世間で言うほどEVが簡単に普及するとは思っていませんが)、将来の日本の工業の食い扶持という点では航空産業はいい選択のはずです。

加えて日本の航空産業が市場を通じて、コストや性能、品質で厳しい洗礼をうけて「常識」を身につけることは、今後の自衛隊機を開発するにあたっても大きなアセットとなります。

現在のような「子供部屋おじさん航空メーカー」では将来全部撤退することになります。

無論中国も記事にあるような弱点や問題点も山積しています。ですが政治外交が一体となって、まずは国内エアラインに買わせる、更に外国、特に金を貸したり、援助している途上国にも買わせるでしょう。当然そのためには賄賂も使うでしょう。また軍が輸送機や早期警戒機、哨戒機などとして採用していくでしょう。そうしながら、徐々に国産比率をあげていくことでしょう。

無論近年は西側の政府も、中国企業による航空関連メーカーの買収には神経を尖らせるようになっており、2010年代までのように海外企業買収によって容易に技術を得ることは難しくなっていくでしょう。

この30年中国の軍事産業の躍進を見れば、それは容易に想像がつくでしょう。

防衛省に言いなりになって、天下りさえ受け入れていれば仕事が落ちてくる日本のメーカーは今後も性能、品質、コスト国際市場で揉まれることもなく、「俺たちサイコー」と官民で褒め合う内弁慶状態を続けているうちに、多額の税金を無駄に食いながら自滅するでしょう。その意味では防衛省は航空機の国内調達をやめるべきです。整備工場さえあれば良い。

我が国の財政状態を鑑みれば、将来絶滅する駄目企業を税金で養う余力はありません。

【本日の市ヶ谷の噂】
自衛隊入間病院が財務省を騙して桁違いの高額予算を引き出して作ったハイブリッド手術室。通常の手術に加えて、血管造影、カテーテル手術が可能な高機能手術室だが、稼働の計画は無く、VIP視察に備えた展示室になっている、との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2022年11月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。