仮想通貨取引所大手「FTX」は破綻寸前か?その影響は?

世界最大級の仮想通貨取引所大手であるFTX社の破綻の可能性が刻々と迫っています。破綻した場合、その債務は「兆円単位」になるかもしれない規模であることと連鎖倒産が相当出ると見込まれ、仮想通貨市場を震撼、戦慄させています。影響度が見えないため、軽はずみなことは言えませんが、金融市場に一定の影響は出るとみています。

FTXのサム・バンクマン・フリード CEO FTX HPより

仮想通貨ビジネスなどごく一部の人たちが集う趣味のようなマネーゲームで以前から不健全だとされていたのだから当然の結果だ、と指摘される方が大多数を占めると思います。しかし世の中、怪しいものに手を出す人はごまんといるのです。ご記憶にあると思いますが、韓国発の仮想通貨「テラ」が大暴落し、韓国の若者など、一攫千金を夢見た投資が一瞬にして紙くずになり、大混乱をきたします。創業者のクォン ドヒョン氏はインターポールに指名手配される状態です。

FTX社の現状は資産の保全が実質不可能であるため、日本は既に業務停止命令が下され、資産を顧客が動かせない状態になっています。現在、事態は峠にあるとみており、今後の展開が注目されますが、数日中にも行方は判明するとみています。

そもそもFTXという仮想通貨取引所がなぜにして巨額資産を確保できたのか、であります。私が見たところ、一種の金融詐欺であります。創業者のサム バンクマンフリード氏は鬼才などとも称され一時期は2百億㌦以上の資産を持っていたとされます。つまり3兆円規模。どうやって生み出したのでしょうか?

FTXという会社組織とは別にバンクマンフリード氏は個人会社のアラメダ リサーチを設立、そこと自社トークンを使った資産裏付けが薄い取引を行ったのです。FTX社はトークン(電子証票)である「FTT」を発行します。これはビットコインやイーサリアムとは比べようがないほどの脆弱なカラ手形で勝手に価値を創造しているようなものです。しかも無限に生み出すことが可能です。このトークンをアラメダに提供、さらにアラメダはその保持するFTTを担保に更にFTX社から融資を引き出し、アラメダはあらゆる弱小トークンへの投資を行うのです。その数、100以上とされます。

そもそもFTTをふくめたトークンの価値など絵に描いた餅ですが例えばイーロンマスク氏がドージコインを支持して話題になったこともありました。それと同様、FTX社に対しても割とまともな企業であるはずのソフトバンク、セコイア、ブラックロック、タイガーキャピタル、サードポイントをはじめ相当数が資金を提供してるわけです。つまり冒頭述べたように不健全と社会が指摘すればするほど魑魅魍魎な世界に特定の人は魅力を感じ、大きなリターンを期待してしまうのです。それこそ戦後話題になった「M資金」に群がる人と全く同じ心理構造です。

もう一点、今回の騒動の一翼を担ったのが世界最大手の仮想通貨取引所、バイナンスのチャンポン ジャオ氏のポジションにもあります。そもそもFTXの不健全性を指摘したのはジャオ氏。そして瞬く間にトークンの価値が10分の1になり、そこでジャオ氏が一旦は海外資産について救済の手を差し伸べたものの内容のあまりの酷さに「やーめた!」としたわけです。

ではFTXが破綻するとどうなるのでしょうか?星の数ほどあるトークン市場は崩れる一方、ビットコインやイーサリアムなどはいずれ持ち直すだろうとみています。それは市場があまりにも違うことと透明性、市場性、投資家の数、規模など安定感があり、一部の金融詐欺がその存在性までを揺るがせることにはならないとみられるからです。但し、多少、時間がかかるかもしれません。着想としてはトークン市場の不健全性が高まれば高まるほどビットコインなどの確立された仮想通貨により資金が集中するというシナリオです。

実はこの数日、金(ゴールド)市場が大きく上昇し、大変賑わっています。理由の一つにFTX問題で一部の資金がゴールドに流れており、ショート筋が慌てて買い戻しているのが理由です。金と仮想通貨市場は投資ジャンル的には同種扱いにされがちで連動性がある時と反連動性の時が混在する非常に複雑な動きをします。今回は明らかに反連動性の展開であり、様子を見るということかと思います。

FTXの破綻懸念は日本では一部の専門ニュースでしか話題になっていませんが、震撼させる潜在的マグネチュードは大きいとみています。日本のメディアはその点が鈍感なのでことが起きてからではないと報道しませんが、起きてからでは遅いこともあるのです。そういう点でも本件を注目しています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年11月11日の記事より転載させていただきました。