日米韓ASEAN首脳会合がプノンペンで開催されました。インドネシアでのG20開催に日程を合わせたものでバイデン大統領はアメリカとASEAN諸国の関係を「包括的戦略パートナーシップ」に格上げすると報じられています。また岸田首相は北朝鮮問題を取り上げ、その危機感を共有しました。更に日米韓首脳会議に日韓首脳会議と外交スケジュールが忙しくなっています。
アジアの安定と成長は果たして可能かという題目に対し、世界の地域を俯瞰した時、これほど難しい地域は他にないということをまずは指摘したいと思います。
北米はアメリカとカナダを主軸にメキシコが経済的メリットを享受することで体制を維持する頑強な仕組みが整っています。アメリカにとってメキシコは利用価値が高いのです。それは豊富な労働力を提供し、違法不法問題があるとしてもアメリカ南部の国内経済に一定のメリットを生み出しています。中南米との緩衝ゾーンとしての役割もあります。
欧州はEU設立の起源である大陸北部の優等生国家が主軸となるもののその組織体は北米同様、経済的メリットを上手に活かしてユーラシア大陸の東にどんどん広がる展開を見せています。共通通貨ユーロは各国の財政事情に伴う調整機能という根本的問題は抱えているものの今日に至るまで安定して成長しています。
欧米の共通点は域内に敵がいない、これが重要な点です。
ところがアジアについていえばそれがほぼ機能できない不全があります。この点についてわかってはいるけどきちんと概括したうえで議論をしたものは案外少ないのかもしれません。つまり、欧米の国家間関係は経済的メリットを主軸に廻っており、イデオロギーや社会、文化的背景を劣後させることで手をつないでいると言えます。
言えることは結局は経済がうまく回る、景気が良い、労働者や経営者が安定成長を享受できることが重要であるわけです。
ところがアジアの場合はまず、センターに中国という物理的な大国があり、残念なことにその体制が権威主義であり、中華思想的でイデオロギー第一主義であることです。一方、経済規模世界第3位の日本は中国と体制的な対立をしながらも経済的には貿易量の1/4を双方向で依存しあう関係にあります。同様に日韓関係も政治的には溶け込めないながらもビジネス関係や若者レベルでの好感度は悪くない状態が継続しています。
更に東南アジアになるともっと複雑で中国がテコ入れしているミャンマーやバングラディッシュがあると思えばインドやタイのように距離感があるケースもあります。華僑が演じる複雑な人的関係もあるし、宗教的に仏教の大陸側とフィリピンのようなキリスト教、インドネシアのイスラム教といったバラバラ感もあります。
更に東アジアのunrest(不穏)、つまり台湾問題と北朝鮮問題は特筆すべき事項だと思います。おまけに日本と台湾は近い関係、台湾と韓国は近くない、日本と韓国はバリアがあり、北朝鮮とは全く相いれません。中国は台湾を自分の一部だとみなし、北朝鮮はやんちゃで頭が痛いが割と放任している一方、韓国には「寸止め」手法を使います。中国は日本に対しては枠組みの中で積極的に敵対する気もなさそうですが、時代時代で枠の大きさが変わるという都合よさがあります。
この中で岸田首相が懸念する北朝鮮ですが、最近の蛮行は何故できるのでしょうか?私は2つのアングラ経済が機能しているとみています。一つが仮想通貨の強奪、もう一つが武器などの売却やロシアへの人材提供などで収入を確保しているものとみています。例えば今年3月にあるオンラインゲームにハッキングして一気に930億円を強奪(日経ビジネス)したり、かつてはバングラディッシュ中央銀行から120億円ハッキングするなど極めて悪質な強奪を国家として実行しています。武器などの売却はロシアのニーズ、つまり戦争特需に沸いていると言ってよいのでしょう。故にミサイルは飛ばせるし、核実験にまい進することもできるのです。
北朝鮮問題は資金源を断つことがたやすくないけれど最もシンプルな方法です。日本は懸念表明を繰り返すより、圧倒的な防御策、つまりハッキングされず、資金源を断つことに注力し、ASEAN各国とそれを共有すべきだと思います。幸いなことにFTXが倒産したことで仮想通貨の管理が再び中心課題となるでしょう。一気に世界規模で管理強化を図るべきでしょう。
東南アジアについては身になる援助をしていくべきです。ハノイやバングラのダッカにいった時、思ったのはこの街には公共交通機関が発達していない、故にオートバイが日常の足となり、交通や環境問題を引き起こす、ならば地下鉄などを作ればよいのですが、モノを作るだけではなく、都市づくりを長期に渡って指導するようなしっかりしたグリップづくりは重要だと思うのです。
フィリピンのセブで現地の方が「この橋は日本のODAで作ってもらった」と嬉しそうに話していたのを覚えています。が、日本は橋を作ったら終わりなんです。そうではない、それは経済協力の始まりに過ぎず、もっと深く関与し、ウィンウィンの長期の関係を作ることが日本の使命だし、日本にとって東南アジアのリーダーシップに繋がると考えています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年11月14日の記事より転載させていただきました。