晴海フラッグは再開発エリアの魅力に勝てるのか?

CHUNYIP WONG/iStock

茅場町と言えば、東京証券取引所がある証券会社の集積地です。ネット証券の台頭によって、いわゆる地場証券は衰退していますが、地元を仕切っている平和不動産によって、ここ数年急ピッチで周辺エリアの再開発が進んでいます。

今までは土日になると証券取引所がクローズし、閑散とした街だったのですが、商業施設が次々とオープンして、ニューヨークのソーホーのようなエッジの効いた街に変わりつつあります。

週末に出かけたk5というリノベーションされた建物に入っているバー(写真)は、赤を基調とした個性的な内装で、本格的なオリジナルのカクテルが楽しめます。

遅い時間まで、若者で賑わっていました。ここにはスーツを着た金融機関のサラリーマンのような風貌の人はいません。

茅場町に限らず再開発のビルの特徴は、古い建物のレトロな雰囲気を残しながら、内装をスタイリッシュに仕上げ、レトロとモダンの融合を実現していることです。

確かに、配管や天井の高さなど、古いビルの問題点もありますが、現在の建築では見ることのない懐かしいデザインが残っていて、それが街の魅力を高めているのです。

また再開発エリアは老舗の飲食店なども残っており、街に根付いた文化を守り続けています。下町の洋食店やお寿司やお蕎麦のお店には、何とも言えない風情があります。

更地に新しくできた最新鋭のビルは、確かに機能的ではありますが、どこか味気なく、どれも同じように見えてしまいます。

晴海フラッグのような、新しく開発されるエリアは、恐らくチェーン店ばかりが集まった金太郎飴のような味気ない商業エリアになってしまうでしょう。

利便性は高くても、深みには欠けるのです。

そうならないためには、地元ならではの独自色をプロデュースする必要があります。街のトータルなデザインや、誘致するテナントによって、開発している不動産会社の力量とセンスが問われます。再開発エリアの魅力に劣らない街を創るのは簡単ではありません。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年11月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。