ルラがブラジルの大統領に復帰するとロペス・オブラドール大統領のラテンアメリカでのリーダーシップの座が奪われるだろう。
ルラ氏が再びラテンアメリカのリーダーの座に就任する可能性大
先月10月にブラジルでルラ・ダ・シルバ元大統領(ルラ)が勝利した。それは、これまでラテンアメリカのリーダーとして君臨したいと目論んでいるメキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領(アムロ)の野望が崩れることを意味するようになる。
ルラの復帰を強く望んでいたアルゼンチンのフェルナンデス大統領
例えば、アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領はルラの大統領としての再登場に強い期待を寄せていた。ブラジルとアルゼンチンは兄弟のような関係で、貿易取引も両国の間でそれぞれトップを占めている。ところが、極右のボルソナロ氏が大統領になってからは両国の関係はうまく行っていない。フェルナンデス大統領にとってブラジルとの強い絆を復活させるにはルラの登場が必要なのである。
フェルナンデス大統領はメキシコとラテンアメリカの枢軸を構想したが・・・
フェルナンデス大統領はボルソナロ政権下のブラジルではラテンアメリカでリーダー国としての枢軸を築くのは難しいと判断して、メキシコのアムロに接近した。ラテンアメリカ南端のアルゼンチンと北端のメキシコとで枢軸を構築するという構想をアムロに提案した。アムロはそれを受け入れた。特に、コロナのワクチンでは両国が協力してラテンアメリカでのワクチンの普及に両国が協力した。ベネズエラのチャベス前大統領が実行した安価な原油を同盟国に提供する原油外交に代わってワクチン外交の展開であった。
しかし、アムロは所詮外交感覚には疎く、大統領に就任してから4年間に外遊は米国と中国だけである。
1994年に北米自由貿易協定を成立させてからはメキシコは米国とカナダとの関係に強い視線が向け、ラテンアメリカへの関心は薄いものになった。それをアムロは修正しようとしているが、アムロ自身が国際外交感覚に欠けている。大統領専用機も維持するのは高いものにつくといって売却しようとしたほどだ。今も買手は見つかっていない。米国と中国を訪問するのも民間航空を利用した。
また、これまでも外遊にはマルセロ・エブラルド外相をアムロの代理として送ったことが何度もあった。ルラが1月にブラジルの大統領に就任するまでラテンアメリカでアムロに代わるリーダー的存在になれる指導者はいなかった。
ルラのリーダーシップはCELACを媒体に
ところが、ルラがブラジルの大統領として再登場して来ると、ラテンアメリカ諸国の視線はルラに向けられるようになるはずだ。しかも、ブラジルは国家として経済力ではラテンアメリカでナンバーワンの国である。
ルラが大統領だった時のブラジルは世界を相手に外交を展開させていた。更に、ルラが今後望んでいるのは米国、カナダ、メキシコの貿易協定にブラジルも参加したい意向を示していることだ。
ルラは大統領になれば米国との関係の改善を図るはずだ。仮にそれができない場合はラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)を通してラテンアメリカのリーダーシップを握る意向を見せるはずである。
CELACは米国とカナダを敢えて除いたラテンアメリカとカリブ海諸国の発展を図るものである。米国とカナダが参加している米州機構(OAS)に対抗するものであり、CELACには中国が背後から応援している。