愛知県ワクチン接種後急死症例がアナフィラキシーではなかった可能性

愛知県でコロナワクチン接種後に急死した症例において、現場の医師の対応に問題があったのではないかということが話題となっています。

「妻の心臓が止まるまで見殺しにした」夫が怒りの告白 BA.5対応のワクチン接種後に42歳女性が死亡 アナフィラキシーの治療されなかったか 愛知 | 東海地方のニュース【CBC news】 | CBC web (1ページ)
愛知県愛西市で、BA.5対応型ワクチンの接種後に女性が亡くなりましたが、この女性は、接種後、体調が急変した際にアナフィラキシーの治療を受けないまま亡くなっていたことが分かりました。愛知県医師会も重大案件… (1ページ)

この第一報を聞いた時、接種5分後に息苦しいなどの体調悪化を訴えて、その後死亡したのであれば、アナフィラキシーで間違いないと、私は思いました。また、死亡診断書の病名が、急性心不全となっているという話を聞いて、事実をねじ曲げているのではないかという疑惑を抱きました。

しかしながら、厚労省で公開された症例データを丹念に読んでみたとろ、考えが少し変わってきました。つまり、今回の症例はアナフィラキシーではなかった可能性も若干あるのです。

まず、アナフィラキシーのガイドラインを見ておきます。これによりますと、皮膚および粘膜症状(蕁麻疹、血管浮腫、口腔内腫脹など)は80~90%、気道症状(嗄声、呼吸困難、咳、喘鳴など)は最大70%、消化器症状(腹痛、嘔吐、下痢など)は最大45%、心血管系症状(血圧低下、胸痛、頻脈など)は最大45%、中枢神経症状(破滅感、拍動性頭痛、浮動性めまいなど)は最大15%に発現すると解説されています。診断確定には、複数の臓器で、複数の症状が存在することが必要です。

次に、ガイドラインを用いて、報告データを分析してみます。

【ポイント1】
接種10分後、顔面蒼白で呼吸困難を訴えている時点で、医師はバイタルチェックの指示を出しています。当然、看護師は血圧を測定したはずで、もし血圧が低下していれば医師に報告して記録したはずです。ところが、データには血圧の記載がありません。血圧を測定しなかったのであれば論外です。この時点での血圧データは極めて重要です。また、データでは皮膚所見なしと記載されています。つまり、蕁麻疹が生じていなかったということです。

担当医がどのような主張をしているのか不明ですが、「血圧低下がなく蕁麻疹などの皮膚所見を認めなかったので、アナフィラキシーと判断しなかった」と主張しているのであれば、医学的に全く間違っているとは言えません。

【ポイント2】
病院搬送後、心肺停止の状態で医師は挿管管理(人工呼吸器管理)を実施しています。この時、医師は咽頭~喉頭浮腫の有無を確認できます。粘膜病変を認めなかったと記載されていますので、接種57分後の時点で口腔~咽頭・喉頭浮腫は認められなかったということになります。また、皮膚所見も認めなかったと記載されています。咽頭・喉頭浮腫が確認できず蕁麻疹も認めなかったため、病院の医師は、死亡診断書の死因を、アナフィラキシーショックではなく、急性心不全にしたと推測されます。つまり、病院の医師は、事実をねじ曲げて、死亡診断書を書いたわけではないことになります。

【ポイント3】
病理解剖は実施されませんでした。真実を追究するには、病理解剖は必須です。どのような経緯で、病理解剖をしないことになったのか不明です。適切な助言をできる人が周囲にいなかったことは、残念でした。

【ポイント4】
接種後15分以内に体調が悪化して、アナフィラキシー以外の原因で死亡した報告例が存在しています。今回の報告の直後に、似たような経過で死亡した症例が東京で報告されています。この報告では、接種後15分の経過観察中に体調不良を訴え、すぐに意識不明となり、病院に搬送され死亡が確認されたということです。この症例では、司法解剖が実施され、アナフィラキシーの可能性は低いと報告されました。

アナフィラキシーの約10%は皮膚粘膜所見を伴わないとされていますので、今回の症例では、アナフィラキシーの可能性を否定することはできません。ただし、最後まで皮膚および粘膜所見が発現しなかったため、確定診断は難しい症例だったと言えます。また、病理解剖を実施していないため、死因の特定は有耶無耶で終わりそうな予感がします。私はコロナワクチンとの因果関係を認めるべきと考えますが、厚労省は例によってγ評価に認定しそうであり、残念な結末になりそうです。

【補足】
ネットの一部では、今回の症例は、コーニス症候群ではないかと指摘されています。これは、アナフィラキシーなどに伴い急性冠動脈症候群をきたす疾患です。この疾患が厄介な点は、アドレナリンを筋注すると、心筋虚血の増悪や不正脈が生じる危険がある点です。アドレナリンを筋注していたとしても、治療が極めて難しい症例であった可能性があります。

NHKより