いま見過ごせない「ニュース」:中国の不法臓器摘出ビジネスなど

インターネット時代、無数の情報が世界を行き来している。情報量があまりにも多いので時には重要なニュースが見落とされる、という事態が生じる。以下、3件の情報を報告する。いずれも今後の展開に重要な影響を与える内容だ。

ドイツ経済省の極秘の「対中国戦略」を報じるニュースポータル「ザ・パイオニア」から(2022年12月1日)

①江沢民元中国国家主席の「法輪功弾圧」

中国の江沢民元国家主席が先月30日、白血病と多臓器不全で上海で亡くなった。96歳だった。江氏は天安門事件後、13年間、中国共産党のトップに君臨し、中国の経済成長を促進させ、世界第2の今日の経済大国の土台を築いた。

第20回共産党大会で3期目の任期を得て「一強」の独裁体制を構築してきた習近平現主席と比較して、江沢民時代を懐かしむ声が一部で聞かれるが、中国第5代目国家主席「江沢民」(在職1993年3月~2003年3月)という名前を聞けば、やはり法輪功メンバーへの過酷な弾圧を想起せざるを得ない。

江沢民氏は上海市長、上海市党書記などを経て、1989年6月4日の天安門事件の後、鄧小平の推挙により、失脚した趙紫陽に代わって党総書記および中央政治局常務委員に就く。97年に鄧小平が死去。後ろ盾を失った江沢民は以後、自身を支える政治集団「江沢民派」(上海閥)を構築して独裁政治を続けていった。

1990年代後半に入ると、李洪志氏が創設した中国伝統修練法の気功集団「法輪功」の会員が中国国内で急増し、1999年の段階で1億人を超え、その数は共産党員数を上回っていった。法輪功は宗教ではない。心と体のバランスを維持する上で役立つ修練法だ。貧しい国民だけではない。共産党幹部たちも法輪功に惹かれ、トレーニングする者が出てきた。それに危機感をもった江主席は1999年、法輪功を壊滅させる目的で「610弁公室」を創設した。法輪功メンバーの取締りを目的とした専門機関で、江氏の鶴の一声で設置された組織だ。「610弁公室」は旧ソ連時代のKGB(国家保安委員会)のような組織だ(「中国の610公室」2006年12月19日参考)。

中国当局は拘束した法輪功メンバーから生きたままで臓器を取り出し、それを業者を通じて売買してきた。2000年から08年の間で法輪功メンバー約6万人が臓器を摘出された後、放りされて死去したというデータがある。

中国の不法臓器摘出の実態を報告したカナダ元国会議員のデビッド・キルガ―氏は、「臓器摘出は中国で大きなビジネスだ。政府関係者はそれに関与している。法輪功メンバーの家族が遺体を引き取った際、遺体には腎臓などの臓器が欠けていたという証言がある」と報じている。法輪功メンバーにとって「江沢民」という名前は悪魔を意味するわけだ(「江沢民『何故まだ生きているのか』」2022年7月25日参考)。

②イラン製ドローン(無人機)の主要部品は欧米製

ウクライナで撃墜されたイラン製無人偵察機から収集された情報によると、UAV(Unmanned aerial vehicle=無人航空機)のほとんどの部品が米国、ヨーロッパ、およびその他の同盟国の企業によって製造されているという。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、この情報はウクライナ国営通信社「ウクリンフォルム」による。

同報告によると、「ウクライナで撃墜されたイランの無人偵察機のコンポーネントの4分の3は米国製と推定していることから、西側の当局者やアナリストの間で懸念を引き起こし、米国政府の調査を促している」という。ウクライナの捜査官の説明によると、この調査結果は、ウクライナ軍がイランのMohajer-6無人機を含む数機の無人機を撃墜した後に行われたものだ。

なお、ロシアのプーチン大統領はイランから無人機を購入してウクライナ戦に投入している。

③ドイツ経済省の「対中国戦略」

ドイツのロバート・ハベック経済相は、ドイツ企業の中国ビジネスを今後詳細に調査する意向だ。ニュースポータル「ザ・パイオニア」が1日報じたもので、経済省で作成された極秘の「中国戦略」がその土台となっているという。

経済省の文書によると、中国が遅くとも2027年までに台湾を併合すると想定している。これは人民解放軍の創設100年にあたる年だ。中国との経済的な結びつきを考えると、ドイツは北京からさまざまな脅迫を受ける状況に置かれると予想されている。

ポータルによると、100ページに及ぶ同戦略文書についてはショルツ3党連立政権(社会民主党、「緑の党」、自由民主党)内でまだ審議されていないが、ハベック経済相は先月29日、経済省幹部会でそれを受け入れ、対策の迅速な実施を約束したという。例えば、中国市場で事業を大きく展開しているドイツ企業には事業内容の報告義務を導入する計画だ。要するに、ドイツ経済の中国依存を縮小する狙いがある一方、中国市場に代わってアジア、南米、アフリカなどへの経済活動の活発化を促している。

ドイツ連邦政府は11月9日、中国系企業によるドイツの半導体関連企業の買収を不許可とする閣議決定を行った。ドイツの「エルモス・セミコンダクター」の西部ドルトムントにある半導体工場をサイレックス・マイクロシステムズが買収する投資計画について、サイレックス・マイクロシステムズはスウェーデンの同業の半導体メーカーだが、親会社は中国の賽微電子(サイ・マイクロエレクトロニクス)だ。

それに先立ち、ショルツ連立政権は10月26日、ドイツ最大の港、ハンブルク湾港の4つあるターミナルの一つの株式を中国国有海運大手「中国遠洋運輸(COSCO)」が取得する問題で、ショルツ首相は中国側の株式35%取得を25%未満に縮小し、人事権などを渡さないという条件を提示し、ハベック経済相(兼副首相)やリントナー財務相らを説得、閣議決定した経緯がある。中国企業がハンブルグ港への出資を増やすことを認めたというニュースは欧米では懸念を誘発させた。なお、ドイツのオラフ・ショルツ首相(社民党)は11月初め、就任後初の中国公式訪問をし、ドイツと中国間の経済関係の強化などで一致している(「独首相訪中はタイムリーだったか」2022年11月5日参考)。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年12月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。