旅行者数の急回復に対応できない観光地

友人が2年前に貸切予約していた円山公園にある有名な和食店のお席に誘ってもらい、新幹線で京都までやってきました。

前回京都に来たのは、コロナ渦の最中でした。街にはまったく人気がなく、今回宿泊しているのと同じホテルも、すべてのレストランが休業しているような状態でした。

京都駅に到着すると前回の雰囲気は一変していました。写真は、京都駅構内の様子ですが、日曜日の夕方ということもあってか、観光客でごった返しています。駅にあるお土産店や飲食店には行列があちこちにできていました。

街中を歩いていても、外国人の数が多く、観光需要が急回復していることがわかります。地元の人の話では、まだコロナ前の観光客より少ないそうですが、それでもずいぶん戻ってきたと言っていました。

今の問題は、観光需要の急回復にインフラが追いついていないことだそうです。

例えば、タクシーの運転手さんがコロナ禍で職場を離れてしまい、営業できる車の台数が少なくなり、車が捕まりにくくなったと言っていました。

また閉店したお店、休業したお店も多く、再開しようとしても、従業員やスタッフの確保に時間がかかり、思うような営業ができないケースもあるようです。

供給がなかなか元に戻せないにも関わらず、水際対策の緩和と円安によって外国人の訪日が増えています。さらに国内の観光振興策が同時に始まったことで需給バランスが大きく崩れているようです。

敢えて観光振興策を行い、国内需要を喚起しなくても、旅行から遠ざかっていた人たちは自然に観光地に戻ってくるはずです。クーポンの配布によって観光地を混乱させ、需要増に対応できない状態にしてしまう必要はないように思います。

そもそも、観光振興に使われた資金は、将来税金による国民の負担増という形で返ってきます。旅行に行かない人が旅行に行く人に所得移転するようなやり方は、旅行好きの私でも不公平感を感じてしまいます。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年12月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。