覇権の行方

95年よりの恒例行事で本年28回目を迎える「今年の漢字」は来週月曜日に発表されます。22年には様々イベントがあり、毎年同様「その年の世相を表す漢字一字」の第1位を予想するのは非常に難しいことだと思います。私自身いま自分の頭に真っ先に浮かぶのは、ロシアによるウクライナ侵略戦争です。ちなみに月初に発表された「2022ユーキャン新語・流行語大賞」では、「キーウ」が「トップ10」に入っていました。

戦争の「戦」ですと01年、「米国同時多発テロ事件で世界情勢が一変して、対テロ戦争、炭そ菌との戦い、世界的な不況との戦いなど」を理由に選ばれています。しかし私は此の「戦」という字よりも、当たる当たらないは兎も角、「覇」の字の方が適当ではないかと考えています。それは21世紀、ロシアにしろ中国にしろ夫々、覇権を目指した戦の最中にあるということからです。世は正にアジアの時代となり、覇権主義に突き進む中国の存在は今後益々大きくなるでしょう。

世界覇権を巡る歴史を振り返って見ますと、産業革命以降はアングロサクソンが圧倒的な力を持ち支配する世界を作り上げてきました。誰が次の覇権を握るか――大きな歴史観を持ち、いま地球上で次々起こっている事柄を見て行く中で、次代が如何なるものかもある程度洞察できます。我々は新たな時代に飛躍すべく、世界の潮流を逸早く察知しなければなりません。

今年が分岐、転換、前時代との隔絶の年であり、変化が多くかつその程度が激しいという認識を常に持っておく必要がある。言うまでもなく、そういう年は事業リスクも大であるからです――私は此のフェイスブックに投稿した『年頭所感』(22年1月4日)で、こう述べました。世界経済に繁栄を齎したグローバライゼーションは、本年終焉を迎えたと言えると思います。世界は再びブロック経済化され、第二の冷戦構造への瀬戸際に立たされています。今年も正に「分岐、転換、前時代との隔絶の年」であり、経済環境にも隔絶を齎す大きな変化が起こっているのです。

ロシアによるウクライナ侵略戦争は、そう簡単に決着しないでしょう。ここで又更に、中国と台湾の問題まで現出するとなれば、本当に由々しき事態と言わざるを得ません。世界は極めて難しい局面へと向かいつつあります。覇権戦争の過渡期で日本は、中国と米国、東洋と西洋の懸橋となり、世界に期待された役割を果たすべく、リーダーシップを発揮して行かねばなりません。我国民は歴史的使命に対する自覚を持ち未来を見据え、平和裏にその使命を果たそうという努力が求められているのです。


編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2022年12月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。