火中の栗を拾う人材すらいないのが今の日本の政治界

アメリカ上院のシネマ議員が民主党から離脱し、中立(無所属)になると述べ、波紋を呼んでいます。仮に彼女が無所属として立候補していれば当選はなかったでしょう。当選してからの政党離脱はあと出しじゃんけんです。前向きのコメントをすればアメリカの二大政党体制が崩れるきっかけとなるかです。世論、特に政治に無関心な若者が同調すれば変化の兆しが起きないとも限りませんがアメリカ人はそもそも白黒はっきりしたのが大好きな国民性ゆえに中立なんていう思想はないと思います。シネマ議員の個人的パフォーマンスでしょう。アメリカもレベルが落ちてきています。

では今週のつぶやきをお送りします。

あるのか、掉尾の一振

掉尾の一振という言葉を知る人も少なくなったのかもしれません。年末に株価が最後に渾身の力を込めて上昇するアノマリーで12月後半にみられる現象です。その行方は来週の火曜日と水曜日にかかっているといっても過言ではありません。火曜日がアメリカの消費者物価指数の発表、水曜日がFOMCでアメリカの金融政策の発表があります。あらかたの予想は物価は若干の改善の方向で、金利は0.50%の上昇で市場は既に織り込み済みです。

むしろ市場関係者はFRBが一体いつまで利上げをして、それがいつまで続くのかに注目の視線は変わってきています。物価が低下しにくくなってきている中、生活苦が目立っており、個人の消費余力も下がっています。年明け1-2月にガクッと来る可能性を見ています。今週、カナダのクレジットカード残債が大幅上昇したになったと報じられ、個人破産の懸念も出てきています。アメリカのカード残債も第3四半期は昨年同期比15%上昇、フォーブスによると概算で一人平均6000㌦もの残高があるとされ、このクリスマス消費が消費者が最後の背伸びになる公算があります。

アメリカからはぽつぽつ企業倒産の足音も聞こえてくるかもしれません。中古自動車販売のCarvanaや家庭雑貨のBed Bath Beyondの経営は綱渡り状態、銀行はどこも不良債権の水準が上がってきて追い貸しできず企業の「キャッシュ切れ倒産」続出の懸念が出ています。不動産開発業界もボロボロで景気後退の影響は想定上に深い公算がでてきました。その点からすると来週の市場は一時的な安堵があるかもしれませんが、年明けの市場は予断を許さず、春も遠いかもしれません。FRBを恨む声が日増しに高まるかもしれません。

政治が全然煮え切らないぞー

自民党政調全体会議で防衛費増額の討議が大紛糾したと報じられています。防衛費問題は総論賛成各論反対に近い状態で、国民も含め増額は良いのだが、その増額の財源を国民に負担させるのはどうか、という話です。そもそも有識者会議のメンバーが偏った顔ぶれで初めから負担増は国民に押し付けるがありきの話でした。岸田さんはそれを当然、承知だし、そんな話は政治家に限らず誰でも耳にしていました。今回、自民党議員にきちんとした形で説明したのがこの全体会議で、反対派が「バカヤロー」と叫んだわけです。

財源は所得税増税が無理だから法人税に押し付けたいというものですが、これはいくら何でも趣旨が無茶苦茶。まるで家の中の引き出しを全部開けて「あっ、ここにあるじゃん」というようなものであまりにも低次元。私だってバカヤローと叫びたいです。防衛国債でいいじゃないでしょうか?昔、高橋是清がロンドンで日露戦争起債で苦労した話がありますが、資金の使途の性格からは国債が向いていると思います。日本の財源を巡る議論は分かりにくいのです。日本には金があるという一方で財務省は財源云々を言います。財務省官僚は足し引きだけの大福帳とのにらめっこではなくやりくり上手な賢さを見せてもらいたいものです。

旧統一教会の被害者救済法案も12月10日に参議院で可決が見込まれます。ぎりぎり法案可決という恰好だけはつける形となりますが、中身は全く不十分で今後、走りながら修正を重ねていくことになりそうです。これだけ話題になった案件の法案一つすら立派なものにならないのは日本の政治も官僚も相当制度疲労を起こしているともいえそうです。そうなると「岸田さん、しっかりしてよー」になるのですが、交代という声が出ても火中の栗を拾う人材すらいないのが今の日本の政治界です。私はサラリーマン化した「職業政治家」と称したいです。

各党党首 各党HP・SNSより

嫌な気がしてきたウクライナ問題

ウクライナがロシア領土内でドローン攻撃を仕掛けています。新展開入りとみてよいでしょう。ロシアも想定していなかった可能性があり、対応を迫られています。問題はウクライナに西側諸国が援助しにくくなる可能性です。仮に第三国が武器をウクライナに供与し、それがウクライナ国内を守るために使われるならそれは防衛と解釈できますが、仮に国境を超えた場合、どのような被害が及ぶか想定できないリスクが出てきます。ロシアの市民が巻き添えになると本格的な戦争局面になりうるわけで武器供与をした国は敵国扱いとなります。経済制裁と言ったレベルでは済まされなくなるのです。

また、報道ではゼレンスキー大統領がアメリカにクラスター爆弾の供与の要請をしたとあります。使ってはいけない武器でこれを供与せよと迫るゼレンスキー大統領もどうかと思います。つまり、今回のウクライナ問題に対して第三国の世論はウクライナはかわいそうだ、早く終結すべきだ、という国民を慮る気持ちは強いものの手を出すことにはより慎重になってきているとも言えます。マクロン大統領も即時停戦を主張しているのですが、彼は本当に受けが悪いです。

嫌な予感とはベラルーシ国境に集結するとされる部隊が何を意味するのか、です。これでは停戦どころかより大規模な戦争になりかねません。国土が凍結し始めた今、再び戦車が活躍する場面となってきます。アメリカは共和党が下院を握り、武器の供与には渋く、バイデン大統領は口先介入に留まるでしょう。習近平氏もインドのモディ首相も本件とは距離を置きます。戦争は終わってから初めて英雄と戦争犯罪人という判断が下されます。その過程にある現在において、格闘技をやっているわけでないわけで、どちらがどうこうそれを煽るようなことは私にはできません。直ちに停戦あるのみです。

後記
北米恒例のパーティーシーズンも終盤にさしかかり、来週は個別のランチ、ディナーがずらっと入る最後のストレッチに入ります。私も年内あと10回もないと思います。一部のレストランではグループ用特別セットメニューを提示していますが、日本食レストランが一番高く一人1-2万円レベルとなっていてとても払えないです。なんで日本食だけがそんなに高いのか、今年相次いだカナダの日本食レストランのミシュラン獲得で底上げがある一方で職人不足というジレンマなのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年12月10日の記事より転載させていただきました。