日経に「『認知症が減少』のなぜ みえてきた教育水準との関係」と題した記事があります。読み進めていくとタイトルから類推できるように教育レベルが高いと認知症になりにくいという訳です。そもそもの話は東大とスタンフォード大学がまとめた論文で「(認知症は)日本は16年の510万人から43年には465万人に減る」と。
政府の資料によると2016年の高齢者層は3500万人、それに対して43年予想は3900万人なので11%増加することになっています。日本人が認知症になる確率を単純に比率でみると2016年は14.1%であったものが2043年予想は11.9%まで減少するという訳です。
ご承知の通り、認知症のメカニズムは解明されていません。が、こうではないか、という研究は進んできています。基本的には予防措置が重要ではないか、と思います。とはいえ、なってしまった場合どうするのかということで初期認知症になった場合には現在、アルツハイマー系で4種、レビー小体型認知症で1種のクスリが認可されており、近いうちにエーザイの「レカネカブ」も承認されるのではないかと見込まれています。しかし、エーザイの最新の薬でもってしてもその効果は限定的で初期の状態の際に悪化を抑える程度の効果であり、いわゆる完治するというようなものではありません。
ガンの場合でもそうならないように予防することである程度は発症を抑えることができるように認知症もその予防的措置がキーであると考えています。日本は高齢者先進国であり、勤勉さも手伝って高齢者の自発的認知予防訓練が各所で行われていますが、海外においては学会等で確立された理論が少なく、その結果、認知症予防と銘打った活動がやりにくいのが現状です。
例えば私もお手伝いするNPOで日本人の高齢者を中心とした脳トレプログラムがあるのですが、認知症予防などと称したらしかるべきところからすぐさま指摘を受けます。「あなたたちの呼称やプログラム内容は学会で認知されておらず、これをやることで認知症にかかりにくくなるという誤認を与える」と。そこで「脳の運動プログラム」という名で健康的なライフを長く維持するという形で展開させて頂き、政府などからも補助金を受けています。
病気にしろ認知症でもかからないような予防措置をとり、病気なら人間の本来持つ免疫力でそれをはじき返すことが何より大事です。認知症もしかりです。ところが人間、不摂生と共生しているため、積極的な予防措置に消極的になりがちです。また環境適応能力にも個人差が出てしまいます。コロナで多くの方が亡くなっていますが、医学関係の研究者には既往症/不摂生者と健常者の死亡者比較調査をしてもらいたいのです。個人的予想ですが、完全な健常者のコロナでの死亡は比率的にかなり低く、多くが既往症との絡み、もう一つは普段からの不健康な生活習慣が背中を押したのではないかとみています。糖尿病と似ていてそれ自体というより、そこから問題を発生させやすいということではないでしょうか?
クスリに頼るのは人間の免疫力が十分ではなく、それをはじき返せずに病気になった時に強制的に直すためです。よって西洋医学の薬は人間のカラダに一定の負荷をかけるわけですから副作用が出たりするわけです。ワクチンの副反応しかりです。では誰が免疫力を持ち、誰が持っていないのか、これを知るのはまた難しいものです。
ここで冒頭の話題に戻るのですが、認知症を教育に結びつけたのはそこに因果関係があるのではないか、と類推したのでしょう。記事にこうあります。「2043年には大学卒業以上の男性の場合は(65歳の時点残りの人生で認知症を伴う期間が)1.4%にとどまり、高校卒は7.7%、高卒未満は25.6%だった。女性は大卒以上が15.4%、高卒が14.8%、高卒未満が24.6%。学びの機会が増えると、認知症と向き合う期間が短くなった」とあります。
さて、この数字、ある意味、驚愕なのです。記事では一切、分析していませんが、パッと気が付くと思います。なんと大卒の男女比は女性が10倍も認知症で苦しむ期間が長いという訳です。高卒でも2倍です。本当でしょうか?
まず、男女比で平均余命の補正をする必要があると思います。勝手に補正します。2040年における平均寿命が男性、82.82歳、女性、89.55歳ですので65歳からの余命年数はそれぞれ17.82年と24.55年となります。つまり女性は男性より37.77%長く生きるわけですから大卒比10倍の格差は単純計算で2/3に補正されるべきでしょう。それでも格差は大きいです。何故でしょうか?
認知症リスクのファクターはたくさんあります。体重、運動、血圧、飲酒、うつと孤独…でこれだけ見ると男性の方に潜在リスクがありそうなのです。しかし、教育をそこに加えるという発想はある意味、刺激的かもしれません。その意味するところを個人的に考えると論理思考とその実践力ではないか、という気がするのです。
学習院大学のアルツハイマー病専門の高島教授が調べた認知症にかかりやすい職業は地方公務員と教師となっています。理由は同じ作業の繰り返しで思考能力の深掘りをしなかったからとされます。同様に経理、レジ、工場労働者が挙げられています。ということはここに男女の差を類推することができるかもしれません。そう、専業主婦は認知症になりやすい、という仮説です。
私が日経の記事の見出しが目に入った際、違和感を感じたのです。そんな漠とした答えがあるはずがないと。それをもう少し時ほどいていくと私がここに書いたような内容になりやしないか、という類推に達したわけです。
認知症予防、それは刺激が一番だと思います。コロナで高齢者は外に出るな、というお達しが出ました。これにより後年、認知症を促進させたという研究論文が出れば私の類推はあながち間違っていない、ということです。そしてそれが正しいならば日本人の認知症は減る、は間違っていたという結論が出る可能性もあります。理由はAIによる考えない人間の大増殖です。今のままでは減るどころか、爆発的に増加する可能性すらあるとみています。
少なくとも、タイトルにある教育とは最終学歴ではなく、人生においてどのような活動をしたかにかかっていると言えそうです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年12月15日の記事より転載させていただきました。