1. 各国の失業率
前回は日本の完全失業者数や、完全失業率について眺めてみました。
日本は一時完全失業率の高い時期がありましたが、近年は3%程度の低水準に収まっているようです。日本は失業率の低い国として知られていますが、実際に先進国の中ではどの程度でしょうか?
今回は、OECDのデータで先進国各国との失業率の違いを見ていきたいと思います。
OECDで測定している失業率(Unemployment rate)は、日本の完全失業率と同じ定義と考えられます。
失業者及び失業率(OECDサイトより引用)
失業者とは、仕事をしておらず、すぐに就業でき、具体的な求職活動を行っている生産年齢の人々のことです。この定義を一律に適用すると、各国ごとに異なる失業の定義を適用する場合よりも国際的な比較がしやすい失業率の推定値が得られます。この指標は、労働力に占める失業者数として測定され、その値は季節調整されます。労働力は、失業者総数に雇用されている人数を加えたものと定義されます。
失業率とは、労働力人口に対する失業者の割合です。各国で統一された基準で集計されている事になります。
念のため日本の失業率のデータを、労働力調査の完全失業率のデータを重ねると一致することを確認いたしました。
まずは、男性の失業率の推移から見ていきましょう。
図1が男性の現役世代の失業率です。
日本は他国と比較して低い水準で推移している事がわかります。近年では韓国と同じくらいの水準ですし、ドイツともそれほど変わらないくらいです。
アメリカやカナダはアップダウンが大きく、平均値としても高そうですね。
フランスやイタリアは比較的高い水準で推移しています。
図2は2001年から2021年までの失業率の平均値を比較したグラフです。
日本は4.3%で38か国中34番目と非常に低い水準となります。
失業率 20年間平均 男性 15~64歳
単位:% 38か国中
1位 14.5 スペイン
12位 8.8 フランス
14位 8.4 イタリア
17位 7.6 カナダ
22位 6.8 ドイツ
23位 6.3 アメリカ
25位 6.1 イギリス
34位 4.3 日本
38位 3.9 韓国
平均 7.5
2. 女性の失業率
次に女性の失業率についても見てみましょう。
図3が女性の現役世代の失業率です。
男性位と比べて水準が高めの国が多いようです。特にイタリアは女性の失業率がかなり高いですね。
日本はやはり低い水準が続いていますが、近年ではドイツや韓国と同じくらいのようです。
図4が女性の失業率について、直近20年間の平均値を比較したグラフです。
日本は3.9%で、38か国中36番目と非常に低い水準になります。
イタリアやフランスは先進国でも高い水準ですね。カナダ、ドイツ、アメリカは平均値を下回りやや低めです。
失業率 20年間平均 女性 15~64歳
単位:% 38か国中
1位 20.4 ギリシャ
7位 11.1 イタリア
12位 9.2 フランス
23位 6.7 カナダ
24位 6.3 ドイツ
25位 5.9 アメリカ
31位 5.2 イギリス
36位 3.9 日本
38位 3.4 韓国
平均 8.2
3. 失業率の特徴
今回は失業率について、各国の比較をしてみました。
日本は男性も女性も先進国の中では極めて失業率が低い国と言えそうです。ただし、近年の水準としてはドイツや韓国に近いようです。
アメリカやカナダはアップダウンが激しいのに対して、比較的安定して低水準が継続しているのも特徴的ですね。
日本は働く意思があり、準備のある人が、働きやすい国であると言えそうです。ただし、働く人の労働生産性や給与水準が低い事が課題ですね。
さらに、失業率が高いフランスやイタリアは、給付等の再分配が大きい事も特徴です。
等価所得(世帯人員の平方根(√)で割って調整した指標)で見ると、フランスは失業率の高さも相まって給与所得が日本より低いですが、経常移転給付が大きく、再分配後の可処分所得では日本より高くなります。(参考記事: 「給与以外の収入」も少ない日本)
また、再分配後の所得格差(ジニ係数)や、貧困率も日本は高めです。(参考記事: 「所得格差(ジニ係数)」って何?、 「貧困率」の高い日本の現役世代)
日本は確かに失業率が低く比較的仕事の得やすい国と言えますが、その反面平均給与や労働生産性が低く、再分配が十分ではない国でもあるようです。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2022年12月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。