ロンドンシンフォニーオーケストラ&サイモン・ラトル@フィルハーモニー・ド・パリ。
なんと、シーズン初のオーケストラ演奏会。パリ、今シーズンは、オーケストラ受難。ベルリンフィルは来ない、ウィーンフィルは1度だけ。大好きなバイエルン放送響もスタートカペレ・ドレスデンも来ない・・・。
仕方ないので、ついにベルリンかミュンヘンを初訪問しようと思ったのだけど、現地のプログラムも今シーズンいまひとつ。頼みの綱はウィーン。本当なら、ちょうど今、マイスタージンガーの新作を見に行きたかったけど、肝心のウィーンフィルが今ひとつなのでやめた。いつ行けるかなぁ。
不作シーズンの中で、かなり楽しみにしていた今夜の演奏会。ロンドン響はともかく、ソリストが内田光子でシューマンピアノコンツェルトなのだもの!
未体験だった巨匠のピアノを、個人的2大大好きピアノコンツェルトで聴けるなんて、なんて嬉しい~。(もう一つの大好きコンツェルトはラヴェル♪)
コートのフード被り、手袋して、ふかふかブーツ履いて、ヒートテックで全身を守り、いざ、フィルハーモニーへ。
さすがは内田光子。会場ぎっしり。
シューマン「ゲノフェーファ」序曲、シューマン「ピアノコンツェルト」、ラフマニノフ「シンフォニー3番」という、王道プログラム。こういう王道、久しぶりな気がする。
「ゲノフェーファ」は可もなく不可もなくさらりと。なんかやっぱり、このオーケストラ、あまり・・・。まあこれは、肩慣らしだしね。なんと言っても次が今宵の注目作品!
登場する内田に拍手送り、ものすごくワクワクしながら、最初の音を待つ。
ありゃ~?オーケストラは微妙にずれ、ピアノはためがあって、なんか不思議な感じの出だし。全体的に、ピアノもオケも、まったりというかもったりというか、柔らかいというよりぽってり。なんだろうなぁ、ピアノの音質が、真綿に包まれたようなうちに響き、そこに拳を聞かせるようなためがところどころに入ってくる。
柔らかさの中に、常に明るく推進力と浮遊感があるのが、私にとってのイメージ。それがなんか、オケにもピアノにもあまり感じられない。ゆっくりになってもなめらかでテンポ崩れて欲しくないのだけど、ちょっとバラけて重たげに聞こえる。
ピアノ、1楽章のカデンツァとか、かなり必死な感じで、聞いててドキドキしちゃう。2楽章はまあまあかな。2楽章から3楽章への移りもいい感じ。
この曲、なんと言っても3楽章の後半の盛り上がりが素晴らしく、どこまでも高く登っていく高揚感と躍動感、力強さがたまらなく好き。特に、大大大好きな20秒間があって、そこ聴くだけでも価値がある。ここも、フォルテッシモが少し弱いし、なんと言っても全体のテンポがなんかむずむずしちゃう。
もちろんそれなりに素晴らしいのだけれど、期待がちょっと高すぎたかな。内田光子、モーツアルトやベートーヴェンを聴ける機会があるといいなぁ。
大好きなのに、ライヴでは上出来アルゲリッチ&若手オーケストラと今回しか聴いたことない作品。いつか、オケ&指揮者&ピアニスト、全てが完璧な、会心の演奏に巡り会えますように。(いつも聴いてるのは、Youtubeにあがってる、コンセルトヘボウ&ハイティング&ペライア♪若い頃のアルゲリッチのも、素敵。この曲、フォルテがものを言う)
後半のラフマニノフも、テンポのダラダラ感というか、緊張感が途切れるというか、妙なメリハリが心地悪いというか・・・。どうも取り留めない感じで、結局、どんなサウンドを作りたいのかが聞こえてこない。
おや、セロが7人?いくらなんでも少なくない?病欠たくさん出たのかな?
アンコールのドヴォルザークスラヴ舞曲はよかったので、やっぱりラトルは、壮大な曲よりコンパクトである程度明るい曲が似合うし、オケもしかり。
このカップルは、これが見納めでしょう。ヤンソンス亡き後のバイエルン放送響に移るラトル、愛するヤンソンスが育て上げた素晴らしいオーケストラを、どうか輝かせてください。
編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々4」2022年12月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々4」をご覧ください。