第2次世界大戦が終結した1945年以降に確立した世界秩序は、近年激しく揺さぶられてきた。そして、2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵略により、かろうじて首の皮一枚で繋がっていた秩序が音を立てて崩れ始めた。
国際秩序の崩壊が意味するものは? 2023年以降の日本が進むべき道は? 本書は竹中平蔵氏と中林美恵子氏の対談によって、これらの問いに答えるものだ。一部例外はあるものの、二人の対談は統合され独演会形式で進む。
日本にとっての最大の問題は、「変われないこと」だと言う。過去の成功体験にしがみつき、世界経済の潮流を見誤り体制移行に適応仕切れていない。一方で、アメリカが抱える内なる病についての分析は興味深い。
ロシアのプーチン大統領が着々と開戦準備をする中で、バイデン米大統領が示した曖昧な弱腰外交は、ロシアの侵略を黙認する誤ったメッセージを送ったとの評価が一般的だ。しかし、対ロシア政策で国内の合意を取ることが出来ないと悟ったホワイトハウスは、軍事行動を明確に止めるメッセージをプーチン大統領へ送れなかったというのだ。
酷評されたアメリカ主催の民主主義サミットも、主眼は外交ではなく、民主主義の価値を国民に訴える内政重視の表れで、非常に鋭い指摘だ。ページをめくりながら、これらの主張が、竹中氏と中林氏のどちらによる主張なのかを想像することも本書の醍醐味であろう。
秩序が溶解している2023年以降の世界で日本が今後果たすべき役割については、これまでアメリカが先導してきた自由貿易やグローバル化に日本も共に責任を負い、秩序の再興に尽くすべきであるということ。それは経済力の復活こそが防衛力の基礎になるとの考えであり、ロシアのウクライナ侵略以降に無視された法の支配を立て直すことでもある。
もう一つは、長年欠落が指摘されてきたインテリジェンス機関を日本も設立すべきとの提案だ。インテリジェンス機関を作る前提として、昨年経済安全保障推進法へ盛り込まれなかったセキュリティクリアランス(SC)についても導入が必須となろう。この点については、中林氏がアメリカで実際に経験したエピソードが興味深い。
本書のタイトルにもある民主主義と資本主義は、ロシアによる侵略はもちろん、米中対立や民主主義諸国に内在する法の支配の機能不全により、これまでにない挑戦を受けている。我が国も、その例外でない。
■