平和外交だけで日本を守れるのか

岸田政権の「反撃能力」保有と防衛費増額閣議決定

自由民主党岸田文雄政権は、国際法違反のロシアによるウクライナ侵略の脅威をはじめ、中国による台湾への軍事的圧力の増大や常態化した尖閣諸島への領海侵犯を含む力による現状変更の試み、北朝鮮による核開発や度重なる軍事的挑発など、日本を取り巻く厳しい安全保障環境に即応するため、昨年12月16日に国家安全保障戦略などの「安保3文書」を閣議決定した。

そして、ミサイル防衛の困難性から敵のミサイル発射基地などをたたく「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有と防衛費増額を決定した。さらに、今年1月14日の日米首脳会談では、上記「反撃能力」保有等を踏まえ、中国・北朝鮮・ロシアの専制主義国家による脅威に対して日米同盟の抑止力と対処力を強化することで一致した。

世界の指導者たち 各紙・各政党HPより

平和外交一辺倒の「反撃能力保有反対論」

これに対し、日本共産党や、一部のマスコミ、市民団体、左翼系学者、日本弁護士連合会などは、「反撃能力」保有と防衛費増額について、「憲法9条の専守防衛をかなぐり捨て、軍事大国を目指す危険な戦争への道であり国を亡ぼす暴挙である」などと激しく反発し、閣議決定の撤回を求めている。

このような「反撃能力」保有と防衛費増額への反対論の根底には、自衛隊や日米同盟による抑止力を一切認めず、これに反対する反戦イデオロギーがある。とりわけ、日本共産党は、党綱領において「自衛隊違憲解消」と「日米安保条約廃棄」を明記し「非武装中立政策」を取っている。

日本共産党や上記諸団体等の反対論に通底するのは、軍事対軍事の悪循環に陥る戦争への危険な道であるとして「反撃能力」保有と防衛費増額による日本の抑止力強化を否定し、何よりも憲法9条に基づく「平和外交」による話し合い解決を主張する平和外交一辺倒だということである。

米国の抑止力で担保されている「専守防衛」

しかし、自衛のための抑止力を持たず、「平和外交」だけで国が守れるならば、古今東西を問わず、世界各国が常備軍を持つ根拠を説明できず、ロシアによる国際法違反のウクライナ侵略もない。そして、反対論者が金科玉条とする、日本を守る「専守防衛」も、その実態は日本国内における米軍基地と米国からの「核の傘」の借用による抑止力の存在を大前提としているのである。

反対論者は、これらの抑止力によってこそ、日本を守る「専守防衛」が担保され持続可能である厳然たる事実に目を背けている。もちろん、そのために日本は米国に対して基地提供の負担や思いやり予算等の重い代償を払っている。

平和外交だけで日本を守れるのか

このように、日本を守る「専守防衛」自体が日米同盟による抑止力の存在を大前提とするのであり、この抑止力がなくなれば、反対論者が金科玉条とする、日本を守る「専守防衛」自体が成り立たないのである。

このことからも、反対論者が共通して主張するような、自衛隊や日米同盟の抑止力を否定する「平和外交」一辺倒では到底日本を守れないことは明らかである。今回の岸田政権による「反撃能力」保有と防衛費増額は、日米同盟の抑止力を補強し日本の「平和外交」を補完することによって、反対論者が金科玉条とする、日本を守る「専守防衛」を持続可能とするものに他ならないのである。