共同通信によると、自民党の秋本真利衆院議員が、洋上風力発電事業者側から不透明な金銭的支援を受けた疑いで、東京地検特捜部の捜査を受けているようだ。今年2月8日の記事の再掲。
再エネ議連の事務局長、秋本真利議員をめぐる週刊文春の報道が話題を呼んでいる。今週の週刊文春は、彼が洋上風力企業レノバの関連会社から政治献金を受け取っていた虚偽答弁の疑惑を報じた。
洋上風力の入札ルールを公示後に変更させた
2月2日の衆議院予算委員会では、秋本議員が洋上風力の入札ルールを公示後に変更させた問題を立憲民主党の源馬謙太郎議員が追及した(4:56~)。
最大の焦点は、秋本議員が保有していた洋上風力会社「レノバ」の株式である。彼は株を売買した時期を答えなかったが、2017年に国交省政務官になる前に400株取得し、その後2200株買い増した。つまり彼は洋上風力の入札ルールを決める時期にレノバの株主だったわけだ。
レノバの株価は、200円前後から2021年には6000円まで上がった。これは12月の第1ラウンドの入札で、レノバが落札するとみられていたためだ。ところがこの入札では三菱商事グループがすべて落札し、レノバの株価は1200円まで暴落した。
これに怒ったのが、レノバの株主だった秋本議員である。彼はすでに公示された入札ルールを変更させようと、昨年2月17日の衆議院予算委員会で萩生田経産相に質問した。
より早く、より安易に、政府の目標を確実に達成するためには、第二ラウンドから私はルールの変更をしていくべきだろうと。第二ラウンドは、やはり運転開始時期については、少なくともそこだけでも見直して、開示するぜというルールに私は変えるべきだろう、それこそが国民の利益だというふうに思っておりますので、是非、萩生田大臣にはお力添えを賜りたくお願いを申し上げたいというふうに思います。
このときすでに第2ラウンドは2022年5月に入札を行うことが公示されていたが、レノバ会長(当時)の千本倖生氏などの政界工作で異例のルール変更が行われ、今年3月に延期された。この新ルールは明らかにレノバに有利で、業界ではレノバ方式と呼ばれている。
レノバの株主だった秋本議員が「レノバ方式」に変更させた
おかげでレノバ株は4000円まで値を戻し、秋本議員はレノバ株を全株売却したが、いくら売却益を得たかは国会で答えなかった。源馬議員も指摘するように、これはレノバの株主だった秋本議員が、レノバに有利になるように入札ルールを変更させた利益誘導の疑いがある。
政治資金規正法では、政治資金を株式で運用することを禁じているが、政治家が株式を保有することは禁じていない。第1ラウンド入札の時期には、秋本議員は国土交通省の政務官を離れていたが、国会でルール変更を求めたことは、国会議員の職務権限にあたる。
問題は彼が洋上風力業者から金を受け取ったかどうかである。秋本議員は「レノバから政治献金は受け取っていない」と答弁したが、週刊新潮の取材に対して、風力発電業者などから1800万円の政治献金を受け取ったことを認めた。
再エネ議連ぐるみの利益誘導
これについて再エネ議連の顧問である河野太郎氏は「萩生田氏が個人的にいろいろな仕組みを見てみたかった」からルールを変更したと書いているが、これは嘘である。上のように国会で秋本議員が執拗にルール変更を求め、再エネ議連が毎週エネ庁の役人を呼びつけて、レノバ方式に変更させたのだ。
これは秋本議員の個人的な疑惑にはとどまらない。自分が株を保有する企業に有利になるように入札ルールを事後的に変更するなどということは、法治国家ではあってはならない。これ以上、秋本議員の不正行為を弁護すると、再エネ議連が利益誘導団体とみられるだろう。
東京地検特捜部は再エネ詐欺の捜査を続けているが、この洋上風力問題は、政府の成長戦略会議で自分の会社に利益誘導した三浦瑠麗氏と同じ露骨な利益誘導であり、株価操縦や贈収賄の疑いもある。これも捜査の対象になるだろう。
【追記】今週の週刊文春(電子版)は、こう報じている。
2月2日の衆院予算委員会でこうした点を問われると、秋本氏は以下のように述べていた。
「政務官在任中に(レノバ株の)取引は行っていない。(売買の日付や売却益など)個別の株取引の詳細は差し控えさせて頂きたい」
さらに、野党議員から「レノバ関係者から献金など受けたことはありませんか」と尋ねられ、次のように明言したのだった。
「答えはノーでございます」
だが、2018年から2020年にかけて「エストリオ」から計180万円の献金を受けていた。同社の当時の本店所在地は代表取締役A氏の自宅に置かれており、事実上、A氏の個人会社と見られる。A氏は、レノバの創業メンバーで16年にわたり、取締役(2001年~2016年)を務めていた人物だ。
これは虚偽答弁であり、外務政務官の更迭は確実だろう。