三浦瑠麗氏は成長戦略会議に「事業者」として要望を出していた

池田 信夫

三浦瑠麗氏は、夫の再エネファンド「トライベイキャピタル」が家宅捜索を受けてから1週間、毎日ツイッターのトレンドのトップを独走しているが、きょうになって夫が業務上横領の容疑で捜査を受けていることがわかった。

三浦氏は「私としてはまったく夫の会社経営には関与しておらず、一切知り得ないことではございますが、捜査に全面的に協力する所存です」というコメントを出したが、これは本当だろうか。

急に再エネにくわしくなった「国際政治学者」

私が最初におかしいと思ったのは、2018年3月の「朝まで生テレビ」だった。

このときの番組テーマは「再エネの可能性と課題」。城南信金の吉原理事長は「メガソーラーの発電単価は4円/kWhになって原発より安い」というので、私が「それならFITで20円で買い取ってもらわなくても、補助金なしで自由競争すればいい。原発は価格競争で淘汰される」と突っ込んだら、彼は答に詰まって同じ話を繰り返す。そこに口を出したのが三浦氏である。彼女はこういう。

今の議論が、なんでここが不毛なのかでいうと、原発・反原発で争って太陽光を話し合ってるからです。(私「誰もそんなこと言ってないでしょ」)うちは事業者ですから現場を見てるので、いくらかかるのかも、何にかかるのかもわかってんですよ。

このときは私の言葉と重なったので気づかなかったが、彼女は「事業者なので現場を見ている」といっている。「うち」というのはトライベイ以外に考えられないので、彼女は経営に関与していたわけだ。「現場を見ている」というので、価格交渉などにもかかわっていたのではないか。

ここで私は「太陽光がそんなに安いのならFITはやめるべきだ」という制度の話をしているのに、三浦氏はサウジアラビアがどうとか無関係な話で時間を埋めて「太陽光に競争力があるのはファクトだ」と断定する。これは反論になっていない(飯田哲也氏は問題を認めた)。

それまでエネルギー問題については当たりさわりのないことしか言わなかった「国際政治学者」が、にわかに専門分野でもない再エネについて断定的な話をするようになったのは変だなと思って調べたら、夫が再エネファンドを立ち上げたのだった。

成長戦略会議の委員としての「利益相反」

三浦氏は菅内閣の成長戦略会議の委員になり、メガソーラーのライバルである洋上風力を攻撃した。2020年の成長戦略会議の資料では「規制の総点検に関する具体的な業界の要望」として、3ページにわたって太陽光業界の要求を列挙した。

特に注目されるのは「一定まで開発が進んだ案件に対する改正FIT法施行に伴う認定失効に対する猶予措置」など、違法な太陽光発電設備へのペナルティ緩和を求めていることだ。

次の図のように、2020年度に運転開始したメガソーラー(20kW以上)のうち、58%が2014年までに申請した32円/kWh以上の案件だが、今は原価が10円ぐらいに下がっているので、20年にわたって莫大な利益を得ることができる。

こういう休眠案件が(トライベイのような業者によって)転売されているので認定を取り消し、買取価格を下げるのが改正FIT法だが、三浦氏は、その認定失効を猶予しろというのだ。これは失効物件を抱えたトライベイに対する利益誘導ではないのか。

深刻なのは、これが成長戦略会議という政府機関に提出された資料だということだ。有識者会議の委員はみなし公務員なので、これは(夫からの資金供与による)収賄罪に問われる可能性もある。少なくとも、有識者会議の委員としての利益相反は明らかだ。

彼女を任命した内閣官房は、事業者であることを知らずに任命したのか。あるいは承知の上で、再エネ業者の要望を通そうとしたのか。これは任命した菅内閣の責任も問われる。