ターミナル駅前開発比較、渋谷 vs 池袋:あの池袋が圧倒するわけ

私は都市開発に関心があり、自分でも業務として一定の関与をしてきました。その中で時々思うのが「山手線30駅の顔」です。この環状線沿線はいくつかのカテゴリーに分類でき、それぞれの特徴から駅前を見ていくと割と違った面で面白い考察が出来ます。

独断で述べます。上野から品川まではビジネスエリア、大崎から恵比寿が高額所得者層を背景にしたプライドが高いエリア、渋谷から高田馬場が学生やサラリーマンのトレンド指向性や享楽を追求するエリア、目白から鶯谷が下町的エリアです。特に山手線の駅が一番多い区は港区と並んで豊島区に5つありますが、豊島区の駅は池袋以外は普段乗降する機会はまずない人が大半だろうと思います。

ところで歴史をひっくり返すと江戸が無血開城したあの頃からしばらくは現在の文京区が最も評価が高いエリアでその頃は世田谷区にはぺんぺん草が生えていたのです。その文京地区のアクセスの駅がなぜか豊島区となっています。

ついでにうんちくで申し上げるとありそうでない山手線の区が3つだけあります。それは中央区、文京区、目黒区です。目黒の駅があるじゃないか、と言われますが、駅は品川区であります。もっとついでに言うと品川駅は港区にあります。

池袋西口公園 Ryosei Watanabe/iStock

さて、私の渋谷との縁は中学校の頃からスタートしました。高校も大学もサラリーマン20年勤めた会社もずっと渋谷で繋がっています。今でも日本に行けば大学にほぼ必ず行かなくてはならないので渋谷とは切っても切れない関係があります。つまり渋谷を47-48年見続けてきたわけです。で、「最近の渋谷は変貌しただろう」と聞かれれば本質は何一つ変わっていないと申し上げます。つまり、渋谷のファンダメンタルズは全く同じ。一言で言うと首都高速の高架が街を分断し、ごちゃごちゃした谷の下の街で品格はありません。事実、渋谷の駅そばに億ションは少ないでしょう。道は狭く、緑地は猫の額ぐらいしかない宮下公園ぐらいである点です。

で、その渋谷に東急が全精力をかけてどでかい建物を次々と建てました。その結果どうなったか、と言えば圧迫感がある街になったのです。テレビでは渋谷のスクランブル交差点がほぼ必ず定点観測地点になっていますが、外国人に聞くと渋谷スクランブルは一度見たいけれど渋谷でお金は落としていないことがアンケート調査で判明しています。

渋谷スクランブル CHUNYIP WONG/iStock

実は私は渋谷で飲食するのが好きではありませんでした。理由は落ち着きある店が少なく、誰をターゲットにしているのかわからないような店が多いのです。道玄坂の上の方や奥渋谷まで行けば地元の方のお店はあるのですが、一般の人は行かないでしょう。

街づくりに欠かせないのは顔と緑地、また人がどれだけ融合できるかが重要です。例えば秋葉原は歩行者天国で有名になりました。しかし、オタクのちょっと暗い感じと駅前の6車線以上ある広く明るい開放的な空間や整然並ぶビル群のイメージが全くマッチしないので最近、アキバのイメージが変わってきているんです。

ところで、駅という構築物に対して90度直角で大きな道がそこを起点としてまっすぐ伸びているターミナル駅って思い浮かびますか?東京駅丸の内口、八重洲口と並ぶのが池袋東口なのです。他にはありません。これはある意味、芸術的な美しさがと言える潜在的価値なのです。だけど八重洲口や池袋東口はその魅力を引き出しているとは思えません。八重洲口に関しては丸の内側に押された「裏側」というイメージが長年あります。八重洲側にはサラリーマン御用達の大飲み屋街があるのも案外知られていない事実です。

では池袋。最近、豊島区が東口について全面ホコ天プランを提示しました。そもそも豊島区は文化の街として強く発信、西口の芸術劇場に東口のハレザ、そしてサンシャイン通りとパワーアップする中で全面ホコ天は極めて大きな集客力を得るでしょう。特に道の中央にステージを作って文化発祥を行えば日本で誰も真似ができない唯一の超ド級の街づくりができるはずです。それと池袋東口には南池袋公園というピクニックができる大きな公園があるのも他のターミナル駅にはない魅力です。

私はアニメグッズなどを取引している関係でそのような業者も知っているのですが、実は秋葉原の店をたたみ、池袋に集中する動きが如実に表れてきています。そもそもはアキバは男の子、ブクロは女の子という棲み分けがあったのですが、これすら崩れ、池袋総取りの様相があるのです。

渋谷 vs 池袋という構図だけで考えると申し訳ないですが、池袋は広さで圧倒しています。おまけに土地はフラットで大規模再開発の余地はまだいくらでもあるのです。渋谷は東急という一つの私企業が中心となって開発した街ですが、そこに残された最後の一つのデパートが西武百貨店であるというのも因縁でしょうか?

新宿西口の駅前再開発も進みますが、あの駅の最大の失敗は地下に車寄せを作ったことでしょう。だから東京駅や池袋のような芸術性が出せないのです。あのデザインは当時は良かったのですが、街を複雑、かつ、歩行者を分断する結果となりました。よって小田急デパートがどうなろうが、新宿西口は今の西口以上に代わるものではありません。

ターミナル駅前の活用の仕方も今後2-30年で大きく変貌すると思います。最終的には線路の上の高層住宅を求める声が増えるでしょう。。職住接近です。その上でターミナル拠点に人を集積させるのにどうやって呼び込むのかが重要になってくると考えます。モノを売るのか、働く場所にするのか、文化を発信する場にするのかなど、いろいろあると思います。それぞれのターミナル駅が工夫を凝らしながら面白い街づくりをしてもらいたいものですね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年2月7日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。