人間の寿命を決めるのは「想像力」である

黒坂岳央です。

人間の寿命はどうやって決まるのだろうか? DNAにあらかじめ刻まれていたり、生まれ持った生命力で決まるという「運命決定論」のような意見もあれば、「生活習慣を始め、生き方で決まる」といった意見もある。

もちろん、最終的に個体の寿命は誰にも分からない。タバコを吸い続けても90歳まで生きる人もいるし、健康に気を使っている人ががんでコロリとなくなるケースもある。筆者もかなり健康に気をつけているし、先祖は総じて長生きの家計だが、自動車事故や大震災にあって明日死ぬ可能性だってある。

しかし、あらゆる要素が複雑に絡み合って決まるように見える「寿命」だが、「想像力の有無」が結構大きなファクターなのではないかと思っている。生物学の門外漢の視点からこれを提唱したい。

INDU BACHKHETI/iStock

想像力の欠如が寿命を縮める

世の中には驚くほど想像力が欠けている人たちが存在する。「そんなこと、やる前に少し考えれば誰でもわかりそうなのに」と言いたくなるようなレベルに。

筆者の知っているある人物は、酒に酔って風呂に飛び込み頭部を強打、首から下が永遠に動かなくなってしまった。また、自分が小学生の時に両親は離婚したが、父親は脳梗塞で倒れて半身不随になったようだ(酒と煙草をやりすぎたことが原因とされる)。

また、昨今の飲食店でのバカッター騒ぎでも、明らかに自分の人生を自らの手で終わらせようとしているようにしか見えない。さらに筆者は昔、海外にいった時にドラッグを勧められた経験があるが「絶対にいやだ!」と断ったが、勧めてきた外国人は目の前で陶酔していてそれがなんとも恐ろしかった。

こうした人たちの一部は想像力が欠けている行動や習慣が原因で、自らの人生を閉じにいっているように思える。とても臆病者な筆者からすると、こうした突飛な行動は蛮行にしか思えず、自分の場合は不健康な生活はあらゆるリスクを想像してしまってできない。

不健康な生活を送れば、将来健康を失って一生悔やむ。酒の勢いでおかしなことをしたり、承認欲求に狂ってしまえば永遠に消すことができない禍根を残しかねない。少し先の未来を想像できないと、それは一生涯に渡るダメージを負う危険性がある。結果、寿命を縮めることに繋がりかねないと思うのだ。

あらゆるリスクに覚悟する態度

もちろん、筆者はあまりにも過剰な備えはよくないと思っている。たとえば、「外の世界は危険がいっぱい!車が走り、変質者がうろついているので自宅にこもって生活しよう」となれば、今度は日光浴不足でビタミンD欠乏や運動不足、またそもそも人生が楽しくなくなるのでQOLは下がる。1の潜在的リスクを消すために3のダメージを負うことは愚かである。だが、生きるということそのものもリスクを内包する。要はバランスが重要なのだ。

しかし、起こり得る想定外はできるだけ想像しておき、最悪の事態に覚悟する態度は必要なのではないだろうか。たとえば将来的に必ずやってくるという南海トラフ巨大地震については、いざ地震が起こっても直ちに大津波や地盤破壊で生命の危機に瀕しないような場所を選ぶとか、資産比率100%日本円のポートフォリオでは被害状況によっては、地震で再起不能なダメージを負いかねない。

こうした場合、地震はいつか来るという前提に立ち、いざそうなっても復活できる最低限の状況を作っておくのが良いと思うのだ。市場はこの巨大地震リスクはその現実的タイミングの織り込んでおらず、無視して動いているかもしれない。だが個人レベルでは織り込んでおいて損はないだろう。

また、将来的な健康についていえば過剰な節制は窮屈でも、酒や煙草、塩分過多や糖質・脂質過多、運動不足くらいには気をつけておくことで健康寿命を伸ばすことができるだろう。「そんなに長生きしたくはない」という人でも、少なくとも生きている間は健康でいたいはずだ。「今の健康体は永遠ではない」という想像力を持つことで、日々の生活習慣にも変化をつけることができる。逆に想像しない限りは、変化は訪れないことになるだろう。

想像力が欠如すれば、想定外のダメージを負いかねない。怖がり過ぎ、備えすぎだと人生はかえってコスト高になるが、想像力がなさすぎても寿命を大きく縮めることになるのではないだろうか。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。