大気汚染を自分で測定してみよう

本稿では薪ストーブによる煙害に特化せず、空気を測定し数値化・可視化することの意義について述べてみたい。

大気汚染に悩まされる方々自身の周囲の環境把握、見えない汚染の数値化・可視化による改善要望活動に活用等、有意義なものとされるように強く希望する。

RossHelen/iStock

空気質測定機器を設置する意義

筆者の居住する地域は、残念ながら行政機関による測定局は存在しない。

日本国では行政機関によって各地に大気汚染測定局(一般局及び自排局)が設置されているが、その多くは都市部・幹線道路沿い・商業地などであり、郊外の住宅地域・田園地域・過疎地にはほぼ存在しない。汚染発生源が無いはずなので測定の必要が無いと判断されていると思われる。

気象観測局とは異なり、大気汚染測定局が存在しない自治体もある。

環境省による環境省大気汚染物質広域監視システム「そらまめ君」の測定局はこのようなまばらな配置であり、従って測定局が存在しない地域の居住者にとっては、局地的な空気質の情報を正確に得られるとは言えない状態である。

欧米豪諸国でも行政機関による測定局はもちろん設置されているが、それも日本国と同様に充実しているとは言えない。

更にはそこから得られるデータ自体が正確ではない、もしくは或る意図をもって操作され低めに表示され、満足のいくものではないとの声も筆者は聞いている。

このような行政機関による測定局への不信不満や、実際に居住する地域を自身で測定し把握したいとの希望から、研究者・研究団体・大学等だけでなく一般市民までもが多数の空気質測定機器を設置している。

得られた大気汚染のデータはネットワークを通じて蓄積分析し全世界に公開されている。

特にオランダ王国では市民研究者の有志組織【Scapeler】が、同国で深刻な大気汚染問題の主原因である薪ストーブの煤煙を測定しデータ公開をしている。また、このプロジェクトでは希望者に対し空気質測定機器を販売し民間測定局を増やすことによってデータの精度を高める努力をしている。この組織は恐らく西側諸国の中では、住環境における大気汚染に対して一番熱心で先進的な姿勢と思われる。

多数の民間測定局の目的は、大気汚染についての理解啓蒙・各種燃焼による煤煙発生源に対し排出削減や規制を要求することを主眼としている。これらのデータは空気質の改善を促す活動や実際の研究にも供されている。

大気汚染を測定監視するシステム

世界の代表的な大気汚染測定局ネットワークを紹介しておこう。各国の大気汚染状況が視覚的に理解できる。

PurpleAir(個人等設置の測定局のみ)

米国ユタ州の企業が測定器の販売及び情報サービスを提供している。

IQAir(各国政府機関等設置および個人等設置の測定局)

スイスの企業が測定器の販売及び情報サービスを提供している。

また、以下のようにIQAirのサイト及びスマートフォン用アプリケーションでは、全地球表示で気流による拡散も分析したリアルタイムでの表示が可能である。

● 世界の大気汚染: リアルタイム空気質指数

これは中華人民共和国に本部が存在する大気汚染監視ネットワークである。

検索で「大気汚染 表示」で上位に表示され、日本で利用されている方も多いようだが、筆者は同国機関のサイトに接続するのが非常に恐ろしいので、本稿ではこれは責任をもって紹介することはできない。

勇気のある方はぜひ活用されたい。

もっと空気質への関心を持とう

諸外国の空気質情勢を調査していると、日本は官民ともに空気質への関心は皆無か特に低いと筆者は感じる。

恐らくは西側諸国の中で空気質への意識度は最下位ではないかとさえ感じる。

その証として、アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)が制定し、欧米を中心に事実上の世界標準と言える空気質指標【US-AQI】は現段階では日本政府、環境省では採用していない。

また、中華人民共和国による空気質指標【CN-AQI】は200以下での指標に筆者は個人的に疑問を感じるので、日本国の環境省は世界標準と言えるUS-AQIをぜひ採用するように検討頂きたい。

※ 図表引用:AirNow.gov

日本国内の空気質は高度経済成長期の煤煙対策以降、全般的に良好である故に、皮肉なことに現代では空気質に関する理解度については、日本は先進国中で恥ずべき最下位と筆者は考える。

官民ともに、空気質という言葉と、合法若しくは脱法的な局地的大気汚染が起き得る現代の住環境事情に、一層の関心を持って頂きたいと願うものである。

空気質測定機器の個別詳細については長くなるので別稿で改めて紹介することにしたい。

大気汚染、エアロゾルに関するサイト

筆者が日常参考にしているこちらのサイトを是非紹介しておきたい。大気汚染、エアロゾル、汚染物質についての基本的な知識を得るには最適である。

【SPRINTARS】
(Spectral Radiation-Transport Model for Aerosol Species)
九州大学応用力学研究所 気候変動科学分野

【Aerosolpedia エアロゾルペディア】
(日本エアロゾル学会が運営するエアロゾル用語解説サイト)
エアロゾルに関する用語解説、大気汚染に関心を持つ方々向け

さて、毎度ながらこれだけは言っておこう。

ススとり君homeの装着を強く推奨

「人にも環境にもやさしい薪ストーブ」との宣伝文句は完全な科学的虚偽であり、景品表示法違反を問えるほどの欺瞞である。

この欺瞞は、SDGsの「つくる責任、つかう責任」に対してどのように責任を問われるだろうか。

薪ストーブや暖炉、木材燃焼暖房は著しい大気汚染を起こし、欧米豪諸国では深刻な空気質の悪化と健康被害が急増している。

煙突から大量に、濾過もなくそのまま排出される有害煤煙は「人にも環境にも過酷である」ことは明白である。

法規制が無いからと煤煙を住宅地で撒き散らす結果、多数の周辺住民たちの健康に対する理不尽な攻撃性と、隣人たちを敵に回すことだけではなく、実は使用者自身に最もその害が過酷かつ速やかに及ぶことになる。

偽の環境対策のために使用者・非使用者共に地域全体の居住者の健康を損ね、或いは寿命を短縮することによる中長期的な社会的損失を考慮する必要が有る。

それでも薪ストーブ、木材燃焼暖房が「人にも環境にもやさしい」と頑なに主張するなら、以下論文を確認すべきである。

有害な薪ストーブ
薪ストーブ汚染 

しかし、筆者は薪ストーブの完全禁止は求めていない。過疎地・極寒冷地・中山間地域・キャンプ等、生活インフラの不備な地域での使用に限っては全く問題無いと考える。

薪ストーブや暖炉は、近隣住民たちに対して煤煙悪臭さえ撒き散らさなければ、何の問題も存在しない。

排出するCO2に関しては議論の必要は無いが、その他の有害物質や臭気は除去し排出することは必須条件である。

筆者は当初から一貫して何度もこれを紹介してきた。

薪ストーブの煤煙悪臭問題は、この機器の装着によってほぼ解決できる。僅か100万円である。薪ストーブを設置使用できるような人なら、この程度の費用は取るに足らないものだろう。

たったの100万円で「人と環境にやさしく」なれる。

大気汚染を防止し、多くの近隣住民に憎まれることを防ぎ、感謝される魔法のアイテムであり、今からでも遅くない、速やかに発注し装着されることを強く推奨する。


編集部より:この記事は青山翠氏のブログ「湘南に、きれいな青空を返して!」2023年2月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「湘南に、きれいな青空を返して!」をご覧ください。