アルゼンチンの昨年インフレ率は94.8%

3桁のインフレ率になることを政府は必死で避けた

アルゼンチンの昨年のインフレは94.8%で幕を閉じた。当初100%を超えると予測されていたが、3桁のインフレになることを極力避けようとした政府の努力の甲斐あってインフレ率は2桁で幕を閉じた。それでも90%を超えるインフレは1991年以来である。

マサ経済財務相は今年のインフレは60%に収めると約束しているが、誰もそれを信じる者はいない。経営者や専門家の間では今年のインフレは昨年とほぼ同等の率になると予測している。

ロシアのウクライナへの侵攻でアルゼンチンも間接的にそれが影響して食料品や電気や原油の価格が上昇。その影響で7月にはインフレが高騰して7.4%を記録。それ以後も毎月高いインフレが続いた。この7.4%のインフレというのは他の先進国では1年分のインフレに相当するくらいだ。

だからアルゼンチンではスーパーでも店の開店時間がいつも遅れる傾向にあるという。理由は、頻繁に商品の値札を貼り替えねばならないからである。

アルゼンチンのインフレ高騰の理由

アルゼンチンがいつも高いインフレの被る主因は大きく3つある。

  1. 国民が自国通貨ペソを全く信頼しておらず、米ドルを買い求めようとするため。
  2. その米ドルがアルゼンチンではいつも不足している。理由は輸出が国の経済規模と比較して極端に少ないからである。世界の輸出総額に僅か0.3%しかアルゼンチンは輸出していない。
  3. そのため、財政赤字を補填するのに紙幣を増刷するからである。

このような国に外国企業にとって投資するには魅力が少ない。だから外貨がより不足する傾向にある。

インフレの高騰を食い止める手段はアルゼンチンにはない。労働組合の影響力がラテンアメリカで最も強のもそのひとつ。インフレの上昇率に比例するかのように給与の昇給を組合は企業に供給する。それが受け入れられない場合はストを実行。

生産業者も小売業者も損をしないようにこれからのインフレ率を計算に入れて価格を水増ししてオファーする傾向にある。その上、寡占企業が比較的多くライバルがいないので、いつでも容易に値上げできるようになっている。

このようにして、アルゼンチンは慢性的にインフレの中で国民は生活して行くのが宿命となっている。

ところが皮肉なことに、昨年のクリスマスも例年のごとく商店やレストランは賑わったそうである。これだけ物価が高い国で経済は停滞しているというのに、それは不思議に思える。その理由というのは、今日お金を使っておかないと明日は同じ価格では商品を買うのも食費代も不足するかもしれないからである。

このような国が20世紀初頭には世界でGDPにおいて世界のトップの一角をなし、それはラテンアメリカの他国のGDPを合わせたほどの規模であったという。それが戦後8回のデフォルトそしてインフレ率は世界のトップレベルにある国に変身している。