ロシアのウクライナ侵攻から1年、停戦への道はないのか

田原総一朗です。

ロシアがウクライナに軍事侵攻してから、まもなく1年になる。近頃「ウクライナ疲れ」、「支援疲れ」という言葉を頻繁に聞くようになった。

世界中の人々が一刻も早い停戦を求めているが、当事者たちにはまったくその意識がないようだ。

そしてここに来て欧米諸国が、軍事支援のレベルを上げた。これまで控えていた、戦車を供与することを決定したのだ。その数は、アメリカの31両を筆頭に、オランダが18両、イギリス、ドイツ各14両など、1月末時点で計321両となっている。

今なぜ、こういう事態になったのか。「激論!クロスファイア」で、防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんと、慶應大学教授の廣瀬陽子さんに話を聞いた。兵頭さんは、「戦争が膠着状態となり、犠牲だけが拡大していく。ウクライナ側が『戦車を300両くらいもらわないと、戦況を大きく変えることはできない』と言い続けていた」ことに応えたのだという。

また、戦車を供与するなどの刺激を与えると、プーチン大統領が激烈に反応し、核兵器を使用する畏れがあったが、兵頭さんによれば、「ただちに核を使わないだろうと、見極めがついた」のだという。

しかし、ウクライナに大量の戦車を供与しても、ただちに戦争が終わるわけではない。まだまだ犠牲者は増える。今、日本はいったい何ができるのか。

「日本も武器供与すべき」という声も出てきている。しかし、僕は武器支援には絶対に反対だ。廣瀬さんも、日本が「ウクライナ支援のために、例外的に、とってつけたような形での、武器供与には危機感がある」と言う。日本が軍事的な支援ができないことは、ウクライナ側も十分わかっている。あくまでも、「非軍事分野」での支援を続けるべきだ。

兵頭さんは、日本がすべき支援として「日本の得意である復興支援」、そして「地雷除去」を挙げた。戦争後、地雷除去が必ず必要になる。「日本が各国に呼び掛けながら、先導していくべき」だという。日本にはカンボジアでの地雷除去の経験もある。

それにしてももどかしく、空しい。一刻も早く戦争を終わらせたい、多くの人たちの願いは一つだ。しかし欧米諸国が踏み切ったのは、停戦調停などではなく、レベルを上げた軍事支援だった。まだまだ人は死んでいくだろう。人間の英知はこんなものなのだろうか。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2023年2月17日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。