宿泊先のおもてなしを喜ぶのは日本人より外国人観光客

黒坂岳央です。

こちらのニュースに興味深い記事が取り上げられている。ホテルや旅館などの宿泊施設に取材をしたところ、「外国人より日本人宿泊者への対応が大変だ」と返されるのだという。日本人なら誰もが知っている、「おもてなしの心」。宿泊先からのおもてなし対応を素直に喜ぶのは、外国人という実態は多くの日本人の想像とは違ったのではないだろうか?

この記事で述べられていることは、外国人とビジネス経験のある自分にはよく理解できるつもりだ。思うところを話したい。

JGalione/iStock

海外で日本人はクレーマー扱い?

先ほど取り上げた記事に限らず、日本人は宿泊先において喜ぶよりクレームを言う事の方が多いという話は海外でも起きている。

あるイギリスのホテル経営者は「日本人はその場では笑顔で帰っていくのに、帰国後に不満をレビューしてくるのでとても困る。問題があるならそのようにハッキリと主張してくれないとこちらもエスパーではないので分からない。」と発言していた。

また、これは宿泊においての話ではないが、YouTubeでメーカー公式の日本人向けアカウントでは、コメント欄や高評価/低評価表示をなくすことが多いのに対して、海外向けアカウントでは開放しているということはよくある(現在はYouTubeの仕様変更でそもそも低評価は表示不可能だが)。

その理由は、日本人動画視聴者はメーカー公式チャンネルで、コメント欄を荒らしたり過去の製品サービスに文句を書いたりすることが多く、フランクに低評価をつけてくることが多いのであまり建設的な場になっていないという本音があるのだろう。そうでなければ、海外向けのアカウントでも同じ対応をするはずだ。

これは言うまでもないが、これはすべての日本人についての話ではない。あくまで一部の日本人についてのものであり、件の宿泊客についても同様だ。どの国にもマナーのいい人・悪い人はいる。ただ、日本人についていえばその「一部の人」の割合が比較的多いという話なのである。

日本人は相手への期待値が高い

そもそも、日本人は相手への期待値が高すぎる傾向にあると思っている。ここからはその根拠を取り上げたい。

日本は世界的に見ても、ハイコンテクスト文化でありこれを簡単にいうと「察するコミュニケーション」ということである。いわゆる「空気を読む」のが得意な人種だ。同じアジア文化圏でも中国や韓国、インドネシア以上に日本は察する人種なのである。その対極にいるのがアメリカやオランダなどで「表現して伝える文化」である。

日本人が宿泊するケースについていえば、わざわざ言葉で言わなくても先回りして対応してくれるといった期待値が高い傾向があるということである。これは実際、自分自身も旅行のたびに実感する。こちらが驚くほどの対応をしてくれる。場合によっては「この料金でそんなことまでしてもらうのは、なんだか申し訳ないな」と思ってしまうほどだ。

しかし、日常からハイコンテクスト文化に生きている日本人のほとんどにとっては、このような過剰なほどの接客対応は「慣れ」ている。その一方で、外国人には驚きと感動を持っても迎えられるのでexcellent!という反応になるのだろう。

自分の親族にも宿泊業についている人物がいるが、「外国人はなんでも喜んでくれるのでこちらも喜ばせがいがある。しかし、日本人相手に同じことをしても当たり前という評価になる上、相手によっては図々しい要求を出してくる人もいる」というコメントを聞いたことがある。

宿泊施設の人手不足はとても深刻である。その人手不足は過剰なほどの接客おもてなし対応にもあるだろう。それで喜んでもらえるとやりがいがありそうだが、それを分かってくれるというのは日本人より外国人というのが現実なのである。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。